輸入直後のフィリッピン産の緑熟健全バナナ果実を6℃に貯蔵したもの,6℃に9日間置いた後(6℃-9日区)20℃に昇温貯蔵した果実および20℃に貯蔵した果実(対照区)についてデンプン,デキストリン,麦芽糖,ショ糖,グルコースおよびフルクトースの変化と,α-アミラーゼ,β-アミラーゼ,見かけのstarch phosphory-lase,見かけのF6 Pase,マルターゼ,インベルターゼおよびショ糖合成酵素の活性変化を調べ,次の結果を得た。
対照区において,貯蔵4日後までは初日と大差ないが,6日および8日にはアミラーゼおよび見かけのstarch phosphorylase活性の増加と共にデンプンが急減し,マルターゼ活性の増加に伴ってグルコースが増加した。またこれらの果実ではショ糖合成酵素の活性増加に伴ってショ糖が急増し,同時にインベルターゼ活性の急増および見かけのF6 Pase活性の漸増と共にグルコースとフルクトースも増加した。10日以後にはデンプンの消失と共にアミラーゼ,見かけのstarch phosphory-laseおよびF6 Pase活性が漸減し,ショ糖合成酵素の活性は変化なく,マルターゼ活性が漸増することを認めた。またインベルターゼ活性は急減したが,グルコースは10日以後も直線的に増加し,フルクトースおよびショ糖は漸増した。なお麦芽糖は4日後まで変化なく,6日以後は追熟と共に漸増した。
6℃に4日間貯蔵した場合(6℃-4日区)は対照区の4日後と大差ない。また6℃に6日および9日間貯蔵した果実では,α-アミラーゼ活性は6℃-4日区と差がなく,デンプンの減少もほとんど認められなかった。6℃-9日区の20℃昇温1~3日後にはα-アミラーゼおよび見かけのstarch phosphorylase活性の漸増に伴ってデンプンがわずかに減少した。しかしこれらの障害果ではβ-アミラーゼ,マルターゼおよびインベルターゼ活性は6℃-4日区と大差なく,見かけのF6 Pase活性およびショ糖合成酵素の活性は高く,デンプンの減少以上に糖が増加した。
6℃-9日区の20℃昇温5日および7日後の果実では,糖質および糖質代謝に関与する酵素活性の変化は対照区の6日および8日後と,また昇温後10日の果実の場合は対照区の10日間貯蔵のものと同じような傾向が見られた。
なおいずれの果実においても,デキストリン量は果実重量の0.2%以下であり,貯蔵日数に伴う大きな変化は見られなかった。
以上の結果に基づき,糖質の代謝経路を比較検討し,6℃-9日区の20℃昇温5~7日後は,対照区の6~8日後と同じように,デンプンの加水分解およびamylo-phosphorolysisが盛んであると考察した。
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