前報では, 定常条件下での加硫曲線の数理解析を試みた. その結果, 加硫時間を独立変数, 相対加硫度を従属変数とする対数正規分布関数形式の数式モデルが, N-330カーボンブラック補強SBRの定常加硫条件下の加硫曲線によく当てはまることを示した.
ここでは, この数式モデルを, 非定常な場合にも拡張適用させるための検討を試みた. 加硫温度が非定常に変化する場合には, 任意の時刻で温度が一定とみなせるような微少な時間間隔で, 加硫開始からある時刻までの区間を離散化すれば, この区間での相対加硫度の増分は, 定常条件下での変換数式モデルで計算されることになる. したがって, 加硫開始から任意の時刻までの相対加硫度は, 離散化した区間での加硫度から求められる. しかし, 数式モデルのパラメータは, その区間に到達したときの加硫温度によって異なる. その区間での相対加硫度の増分を計算するための積分の下限値と上限値は, 加硫開始からその区間に到達するまでの累積加硫度によって変わってくる. 結果として, 数式モデルの特定とその積分条件の決定のために,125°Cから165°Cまで5°C間隔の一定加硫温度条件下の相対加硫度曲線群と累積加硫度の指標となる一定溶剤膨潤度を用いてこの問題に対処した.
研究の結果, この方法は加硫試験機で人為的に作りだした非定常条件下での加硫曲線によく当てはまることが確認された. さらに, 肉厚ブロック状試片の加硫は, 加硫温度が非定常に推移することの典型的な例であるが, この場合にもこの方法による推定値と実際がよく一致することがわかった.
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