21系統のSMXAリコンビナント近交系マウスと,親系であるSM/JおよびA/Jの骨格標本を作製し,上顎骨の切歯孔前縁と蝶形骨基底部後縁の距離,下顎骨のオトガイ部と下顎角相当部の距離,および上下顎第一臼歯歯冠近遠心幅径を計測した。各計測部位の大きさに関わる遺伝要因について検討したところ以下の知見を得た。
1.上下顎第一臼歯歯冠近遠心幅径および上下顎骨の前後幅径は23系統内で分布に偏りがない値を示し,これらの大きさの決定に多遺伝子が関与していることが示唆された。
2.上顎第一臼歯と下顎第一臼歯の歯冠近遠心幅径において小さい値から大きい値への系統の順位はほぼ同一であり,両者の相関係数は0.90であることから,第一臼歯歯冠近遠心幅径の決定には上下顎共通した遺伝子群の影響が強いことが示唆された。
3.上顎骨と下顎骨の前後幅径において小さい値から大きい値への系統の順位は,歯冠近遠心幅径ほどではないが同一傾向にあり,両者の相関係数が0.77であることから,顎骨の前後幅径の決定には上下顎共通した遺伝子群の影響が強いことが示唆された。
4.上顎第一臼歯歯冠近遠心幅径と上顎骨前後幅径の系統別順位ならびに下顎第一臼歯歯冠近遠心幅径と下顎骨前後幅径の系統別順位は,ともに一致性がみられなかった。また,それぞれ大きさに相関関係もなく,歯と顎骨の大きさの決定には独立した遺伝子群が影響していることが示唆された。
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