わが国はこの度のSARS outbreakの直撃は幸い免れたが, われわれはこのことから多くのことを学んだ. まず, ヒトが生存している限り多くの感染症と今後とも対峙していかなければならない. とくにSARSのように致死的な急性新興感染症は, 適切な対処を怠ると短期間に広範な地域に伝幡しpandemic感染症となり, 生命を脅かすだけでなく, 社会に深刻な影響を及ぼすことになる. これを防止するには, 国際的医療協力と情報公開, 国内的には防疫の強化や医療・行政組織の迅速な対応が重要となる. 基幹病院としては, 感染症に対するサーベイランス, トリアージ体制, 必要に応じて隔離病室の設置など, 迅速な対応が迫られる. それには, 医療スタッフの教育・研修などを通じて院内感染防止の視点を持った医療が日常的に実践されることが肝要である.
またSARS診療にあたっては, 迅速な診断法や予防・治療法の確立が強く望まれる.
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