幼児期の好ましい食生活体験が, 親子間の基本的信頼感を養い, 青年期の自我同一性を促し, 独立意識を確立させるという仮説のもと, 青年期後期にあたる大学生等を対象に, アンケート調査を行い検証を行った. そして, 過去の食生活体験や日常生活で起こる様々な危機場面での親の関わり方, また本人の親子関係の認知や自分自身の認知が, どのように相互に関係し, 本人の独立意識に関わっているかを, 男女別, 居住形態別に重回帰分析を行い, パス
モデル
を構築した.
「自己独立性」の因子得点は男子の方が女子を有意に上回り, 自我同一性の形成がなされている者ほど「自己独立性」が高いことが示された.
「自己独立性」には, 「自分が好き」(自尊感情) の他, 「我が家の味」, 「孤食頻度」, 「食卓での嫌な思い出」, 「一人で食事をするのが楽しい」など食にまつわる過去の体験が深く関わっていることが示された. 食事時間を通した楽しい親子の心の交流は, 好ましい親子関係 (親子関係の満足度, 親への尊敬度) を構築し, また依存欲求を満たしてくれる場を与え, そのことが青年期の独立意識を促すことが示唆され, 仮説は実証された.
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