目的 織布工場の織機台持員の適正持台数を決定する問題には待ち行列模型の適用が妥当であるが, これには2つの問題点がある.1つは通常の待ち行列模型と異なり台持員が糸切台へ到達するまでの間, 巡回待ちが発生することであり, いま1つは織機の糸切処理時間がアーラン分布に従うため,
待ち行列理論
における状態確率の展開式は指数分布の場合に比して複雑となり数値計算もかなりの手数がかかることである.本報文では前者に対しては, 台持員巡回時間の数学模型を構築して
待ち行列理論
による待ち時間を修正し, 後者に対しては, アーラン分布を用いた状態確率の展開式を誘導し, 両分布について数値計算を試みてその差異を比較した.結果 (1) 織機台持員の1巡回時間Tmを, 受持台数m, 正味歩行時間tmおよび発生する作業のサービス因子ρの関数として数式化しTm=tm/ (1-mρ) を得た.また織機の待ち停台率に関しては行列待ちのほかに新たに巡回待ちを導入して処理待ち停台率qλcとしqλc=λctm/6 (1-mρ) を誘導した.(2) 織機台持作業の待ち行列模型において, 糸切処理時間に指数分布またはフェーズ2のアーラン分布のいずれを適用しても, 織機停台率や作業員手空き率などへの影響は現実にとり得る範囲では十分に小さいから, 実用的には計算の簡単な指数分布で代用しても十分であることを確認した.
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