本研究は,心理臨床家養成において重要な精神科における臨床心理実習に関する探索的研究である.2018年度より,臨床
心理士
養成に加えて公認心理師養成に係る実習が開始され,特に必修となっている医療分野の学外臨床実習の在り方を巡って,現在各養成校が試行錯誤の状況にある.
本稿では,従来から行われてきた比較的自由度の高い臨床
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養成のための臨床心理実習を取り上げ,そこで実習生がどのように実習を体験しているのかを明確にすることで,今後の公認心理師養成に係る心理実践実習との統合を図る狙いで行われた.具体的には大学院を修了した5名の実習生の協力を得て,彼らの実習記録全106回分,合計143,830字(平均1,356.9字/回)をテキストマニングによる分析対象のデータとした.KH Coderを用いた対応分析の結果,実習生の観察態度は実習を通じて一貫性があることが明らかとなった.そして,実習生によって客観的観察が優位か,あるいは関わりながらの観察が優位か,といった個別性が見出された.一方,観察対象は観察態度よりも実習生ごとに違いが認められた.つまり観察対象として臨床
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に注目するか,他職種に注目するか,あるいは患者さんに注目し続けたり,自分自身への注目(内省)が中心となるのか,といった点である.本研究は探索段階であるので,さらにデータを増やす必要はあるが,少なくとも病院や大学院の実習指導者が,実習の教育目標を明確にするとともに,このような実習態度の個性を理解して実習指導することの重要性を考察した.
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