詳細検索結果
以下の条件での結果を表示する: 検索条件を変更
クエリ検索: "新井由美子"
24件中 1-20の結果を表示しています
  • *花形 万理子, 曽根 理
    理学療法学Supplement
    2006年 2005 巻 1082
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/04/29
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】当院にて短下肢装具(以下、AFO)を作製することは多いが、自宅退院後の使用状況の把握は十分ではない。今回、自宅退院後のAFO使用状況を調査し、作製における対応について検討したので報告する。

    【対象と方法】平成15年4月1日から平成17年3月31日までに脳血管障害で当院に入院し、AFOを作製後、AFOを使用した生活設定を行い自宅退院した46名(平均年齢66.0±10.3歳)に、郵送式によるアンケート調査を行い、回答のあった32名を対象とした(回収率69.6%)。個人情報の利用については個人情報保護法に遵守した対応をとった。アンケート内容はAFOの使用有無を中心に8項目を調査した。分析は、AFOの使用有無と他項目の関連性についてカイ2乗検定を用いた(P<0.05)。

    【結果】現在のAFO使用者は78.1%であった。使用有無と各項目の関連で、関連性を認めたものは「現在の必要性」であった。関連性を認めなかったものは「作製時の必要性」「作製時の説明理解度」「転倒経験」「転倒未遂経験」であった。作製時の説明は93%の方が理解していた。不使用理由は、「不要」44.4%、「痛み」22.2%、「サイズの不一致」・「装着の面倒」・「歩行しにくい」が各々11.1%であり、必要性を感じていながら、使用困難な方もいた。また、全員が何らかのリハビリテーションを継続していた(通所57.9%、訪問26.3%、外来15.8%)。

    【考察】「作製時の説明理解度」と「現在の使用有無」が関連性を認めず、説明が理解できればAFOを使用しているという予測とは相反する結果であった。不使用理由のうち「痛み」や「サイズの不一致」は長期的な使用に際しての定期的なチェックアウト不足がその原因と考えられた。また、不使用理由の中で「不要」が44.4%と最も多く、その経緯は機能回復など身体状況の変化に伴う不適合ではないかと予測したが、今回はこの点まで調査しておらず、原因追求には至らなかった。当院ではAFO作製時、医師の処方の下、複数の理学療法士と業者にてチェックアウトを行い、ミスの予防に努めている。しかし、退院後は身体状況や生活環境の変化、専門家による関わりの減少等の理由により、その後の対応が行いにくいのではないかと考えられた。
     今回、作製時の説明は93%の方が理解しており、説明の重要性を再認識できた。今後は、作製時の適応や処方についてより質の高い評価を行なっていくことや口頭説明以外に動作を通して使用の理解を得るなどの対応が必要と感じた。また、患者様と御家族に作製業者の連絡先など不備が生じた際の窓口を伝えておくことや情報提供書などで次施設との連携をとっていくことも必要と考えられた。これら退院後のフォローアップ体制については今後の課題としたい。


  • 屋外歩行の為に装具を再処方した一例
    *二瓶 篤史, 野崎 宏伸, 新井 由美子, 五十嵐 久巳, 市来 詩織, 一場 道緒, 松田 雅弘, 高橋 博之, 田中 直
    理学療法学Supplement
    2006年 2005 巻 1081
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/04/29
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】脳卒中片麻痺患者の理学療法において装具は多く処方されている。理学療法士にとって装具作成時期の決定、処方内容の選択をする事は重要であり、かつ難しい問題である。今回、入院中に装具を作成した後、在宅生活中に屋外歩行の為に再処方をした一例を検討し、長期的な装具アプローチの重要性を考えたい。
    【症例】61歳男性。平成17年1月発症の左片麻痺(右中大脳動脈梗塞)。同年3月より当院PT開始。初期評価では意識清明、感覚重度鈍麻、Brunstrom stage(BRS)上下肢ともIIIであった。また、pusher現象を認め、基本動作は中等度介助で特に立位保持が不良であり、ADLはBarthel Index(BI)で30点であった。
    【経過】2ヶ月(治療用装具):下肢BRSIV、内転筋と下腿三頭筋、後脛筋の筋緊張高度亢進・重度感覚障害を呈し、裸足歩行は著名な内反尖足・はさみ足様で不可であった。8ヶ月(ADL装具):下肢BRSIV、下腿三頭筋、後脛筋の筋緊張軽度亢進・軽度感覚障害を呈し、裸足歩行は軽度の内反で近位監視。在宅生活でBI90点。
    【装具処方内容】2ヶ月:金属支柱型短下肢装具でダブルクレンザック足継ぎ手、足底板として外側フレアヒール・ヒールアップ1cm。8ヶ月:3mm厚のプラスチック短下肢装具(SHB)で足関節背屈5°。トリミングラインは内外果を覆う程度で、足底はフラットとした。
    【方法】ADL装具作成1ヶ月後に2つの装具で屋外10m歩行・屋外6分間歩行(6MD)を10回計測し比較した。統計学的処理はそれぞれの10m歩行スピードと6MDをt-検定を用いて検討した。なお、危険率5%未満を統計学的に有意とした。
    【結果】金属支柱型では、10m歩行(20.4±3.3m/分・58.8±2.4step/分・stride69.3±5.4cm)、6MD(122.5±7.4m)であった。SHBでは10m歩行(15.3±1.1m/分・50.4±2.9step/分・stride60.4±3.8cm)であり、6MD(90±3.2m)であった。また10mスピード・6MDは金属支柱型に比べSHBは有意に増加を示した。
    【考察】装具療法を長期的に考え治療用・ADL用と目的を明確にして作成した事が今回の結果になったと考えた。治療用装具を長期間使用する事は機能・能力の定常化に繋がると考え、回復期から慢性期に移行する時期に機能を最大限に発揮できるADL装具を作成した事は重要である。装具の適応は関しては、能力障害に対する代償的アプローチの代表として考えられてきた。しかし、早期より良適合装具を用いてアライメント矯正、適切な体重支持を図ることにより機能障害に対するアプローチとして有効と考える。したがって、装具療法を長期的なアプローチとして考え、急性期と回復期では治療に、回復期以降ではADLに重点を置いて再処方する事が重要なのではないだろうか。
  • *網本 和, 野崎 宏伸, 松田 雅弘, 新井 由美子, 市来 詩織, 一場 道緒, 五十嵐 久巳
    理学療法学Supplement
    2005年 2004 巻 662
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/04/27
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】前回の本学会において半側空間無視に対する治療法として、Rossettiらの報告したプリズムアダプテーション課題に加えロッドアダプテーション課題を開発し、これらの課題遂行が体幹正中位認知にどのように影響するかを検討した。その結果ロッドアダプテーションという簡易な方法で認知的変容をもたらしえる可能性があることを報告した。今回の研究の目的は、プリズム課題とロッド課題の施行後車椅子操作にどのような影響を及ぼすかについて検討を行うことである。
    【対象】脳血管障害(脳出血)によるいずれも下肢Brunnstrom stage IIIの慢性期(発症から6ヶ月以上経過)左片麻痺3例。症例A(68歳女性、著明な左半側無視)、症例B(77歳女性)、症例C(80歳女性)であった。3症例とも右上下肢または右下肢にて車椅子操作が可能で院内は車椅子自走可能であった。被験者には研究の趣旨を説明し書面にて同意を得た。      【方法】車椅子閉眼正中位認知テストとして、車椅子座位の被験者から7メートル前方正面に5メートル幅両端に目印を設置し、アイマスクを装着しその中央(2等分点)に向かって自走させた。このテストは机上検査の線分2等分課題の車椅子版であり、メジャーにより中央からの偏倚を、1cm単位で5回計測した。このテストを後述のプリズム課題、ロッド課題、および対照課題の前後に施行した。プリズム課題は、右7度偏光のプリズム眼鏡を装着し、被験者の肩および上肢が見えないように布をかけた状態で、テーブル上正中位の棒を見ながらテーブル下方体幹正中位にある目標(棒)に対するリーチ動作を50回行った。ロッド課題は、同様にテーブル上で正中より右側に6cmずれた位置の棒(ロッド)を見ながら、テーブル下にある正中線上の棒を右手でつかむ動作を50回行った。またこれらの対照課題としてテーブル上下でロッド位置を合致させプリズム非装着条件で同様なリーチ動作を行った。
    【結果】
    車椅子閉眼正中位認知テストにおいて、左半側無視症例Aではプリズム課題施行前で左14.4cmが施行後右73.2cmを示し、ロッド課題施行前で右72.2cmが施行後左49.8cmと有意に左方向に偏倚し(p<0.05)、対照課題施行前で右66.4cmが施行後右22.4cmであった。半側無視を示さない他の2症例(B,C)ではどの条件でも著明な変化は認められなかった。
    【考察】プリズムアダプテーション後に半側無視の机上検査だけでなくバランス機能などのほかの課題の改善を認める報告がある。今回の結果から、ロッドアダプテーションは特に半側無視例において車椅子操作における方向性を変化させる影響を持つことが示唆された。
  • *岩本 凡子, 木下 めぐみ, 岡本 浩幸, 松前 良和, 梶川 博, 浦辺 幸夫
    理学療法学Supplement
    2005年 2004 巻 661
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/04/27
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】脳血管疾患による片麻痺者の転倒要因のひとつにバランス能力の低下があげられる。バランス能力の評価には片脚立位時間やFunctinal Reach Testなどが使用されているが、動的バランスの評価方法は少ない。そこで今回、膝関節損傷のバランス能力の評価に使用されているStar-Excursion Test(Kinzeyら、1998、以下SET)の原法を修正し、片麻痺者のバランス能力の評価にSET変法が適しているか検討した。
    【方法】対象は当院に入院または外来通院している片麻痺者23名(男性17名、女性6名、年齢65.24±6.78歳)とした。内訳は左片麻痺13名、右片麻痺10名で、診断名は脳出血9名、脳梗塞14名であり、下肢Brunnstrom-stageは4が5名、5が7名、6が11名であった。対象に高度な痴呆や著しい高次脳機能障害、骨関節疾患を有する者は含めなかった。Kinzeyらの原法を修正しSET変法を実施した。自作の測定装置の中点に測定足をおき、バランスを崩さず立位に戻ることができる8方向の最大リーチ距離を測定した。30秒間立ち上がりテスト(以下CS-30)、開眼片脚立位時間、10m歩行時間をそれぞれ測定し、SET変法と相関を検定した。危険率5%未満を有意とした。
    【結果】有意な相関を示した項目のみ以下に示した。SET変法とCS-30では非麻痺側支持での後方と麻痺側斜め後方へのリーチ(r=0.43,0.46)、麻痺側支持での非麻痺側斜め前方、側方、斜め後方へのリーチ(r=0.45,0.49,0.44)で相関がみられた。麻痺側片脚立位時間では麻痺側支持での麻痺側斜め後方へのリーチ以外の全方向へのリーチ(r=0.43~0.79)で相関がみられた。非麻痺側片脚立位時間では麻痺側支持での非麻痺側斜め前方、側方、斜め後方へのリーチ(r=0.43)で相関がみられた。10m歩行時間では非麻痺側支持での前方、麻痺側斜め前方、非麻痺側斜め後方、斜め前方へのリーチ(r=-0.5,-0.43,-0.52,-0.43)で、麻痺側支持での前方、麻痺側斜め後方、側方、斜め前方へのリーチ(r=-0.46,-0.43,-0.46,-0.52)で相関がみられた。
    【考察】SET変法とCS-30の関係についてみると、片麻痺者が立ち上がり時に非麻痺側へ大きく重心を移すことと関連すると考えた。片脚立位時間との関係は、麻痺側の支持性が高い者ほど、非麻痺側を多方向へリーチできると考えた。10m歩行時間との関係は、応用的な歩行ができる者ほど安定した歩行が可能と考えた。今回の結果から、SET変法は片麻痺者の動作能力の評価に有効であり、特に動的バランスの評価に応用できる可能性が示唆された。
  • *松田 雅弘, 網本 和, 一場 道緒, 五十嵐 久巳, 二瓶 篤志, 新井 由美子, 市来 詩織, 渡邉 修
    理学療法学Supplement
    2007年 2006 巻 1272
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    脳血管障害後片麻痺患者の立ち上がり動作自立は歩行動作へと繋がる練習として重要である。本研究の目的は電動バランスボードを用いて前後傾斜させることで立ち上がり動作の促通に関する効果について検討した。また、後方傾斜時の前方立ち直り反応の違いによる体幹機能の促通の違いについても検討した。
    【方法】
    対象は脳血管障害後片麻痺患者7名(左片麻痺4名、右片麻痺3名)で平均年齢66歳(発症後3-12ヶ月経過)。すべての対象者にインフォームドコンセントを行い、了解を得ている。被験者には、足底接地した座位から立ち上がり動作連続5試行し、時間計測を行った(STS課題)。座位にて可能な限り前方に非麻痺側上肢を伸ばす課題FRT(functional reach test)を3回施行した(S-FRT課題)。傾斜介入:電動バランスボード上座位で5deg/secで10°傾斜する電動バランスボードの前傾(前傾刺激)10回、または後傾(後継刺激)10回の介入刺激を行い、被験者には直立座位を保持するように求めた。その後、前述のSTS課題とS-FRT課題を行った。STS課題と後傾刺激介入時に側方よりビデオ撮影を行った。画像解析は被験者の麻痺側頭部・肩峰・大転子・膝裂隙中央に反射マーカーを貼付し、撮像した画像から動作分析ソフト(DKH社製Frame-DIAS2)を用いて二次元の股関節と頚部の角度を算出した。前傾・後傾刺激前後のSTS課題・S-FRT課題の結果の比較と、後傾刺激介入時の股関節の可動角度と両課題の変化の相関を求めた。
    【結果】
    電動バランスボード刺激前後のS-FRT課題において、前傾刺激(介入前37.8±5.38cm、介入後40.4±4.14cm)・後傾刺激(介入前35.9±7.44cm、介入後39.6±6.86cm)ともに到達距離は介入前と比較し介入後で増大する傾向がみられた。STS課題において、後傾刺激介入後に時間の短縮する傾向が認められた(介入前33.3±7.07sec、介入後29.76±5.46sec)。後傾刺激介入時の股関節の可動角度とSTS課題の変化には中等度の相関が認められた(r=0.64)。
    【考察】
    電動バランスボードの前傾刺激においては重心の前方移動が促通され、後傾刺激においては前方への立ち直り反応を促通することによって、S-FRTの距離とSTSの時間を改善させたものと考えられる。また、後傾刺激により身体を立ち直らせることで、腹部の筋収縮を促通させることで、S-FRTとSTS課題の結果が改善したものと考えられる。電動バランスボードによる体幹前後刺激は、片麻痺患者の立ち上がり動作とバランス反応を改善する上でひとつの重要な方法であることが示唆された。
    【まとめ】
    今回は動作とパフォーマンスの検討を行ったが、今後は症例数を増やし、立ち直り反応による体幹機能の練習効果の違いについて検討していきたい。
  • *曽我部 知明, 白石 成明, 内田 奈美子, 出口 庸子, 泉 唯史, 毛受 雅文, 川村 陽一
    理学療法学Supplement
    2007年 2006 巻 1271
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】本研究の目的は、慢性脳卒中患者においてセミリカンベント型エルゴメーターを用いた心拍定常負荷運動を行い、心肺機能に対していかなる影響を与えるかを明らかにすることを目的としている。

    【対象】対象は、当研究に同意が得られ、発症後6ヶ月以上経過した脳卒中片麻痺患者4名(男性3名、女性1名)。平均年齢64.0±5.0歳であった。下肢Brunnstrom recovery stageは、3が1名、4が2名、6が1名であった。

    【方法】各対象者に初期評価として運動負荷試験を行った。運動負荷には、セミリカンベント型自転車エルゴメーターであるストレングスエルゴ240(三菱電機社製:以下、EM)を使用した。負荷方法は2分間の安静後、ウォームアップとして10Wattで3分間の定常負荷を行い、その後10watt/分のRamp負荷法とした。すべての運動に対して50rpmを保つように指示した。運動負荷時に、テレメトリー式呼気ガス分析装置K4b2(イタリアCOSMED社製)を用いbreath by breath方式で呼気ガス分析を行い、最高酸素摂取量とV‐slope法によるAnaerobic Threshold(以下、AT)とを求めた。同時に多機能心電計FCP‐7431(フクダ電子株式会社製)で12誘導心電図と心拍数を、運動負荷用血圧監視装置FB‐300(フクダ電子株式会社製)で心拍と同期させながら血圧測定を行った。自覚的運動強度を1分間に1回、Borgスケールにて聴取した。得られたATに準ずる心拍数を目標心拍数とし、心拍制御プログラムを用いたEMによる運動を週に1~2回の頻度で8週間行った。駆動時間は、最初の2週を10分、次の2週を15分、最後の4週を20分とし、加えてウォーミングアップ2分、クールダウン3分の駆動を行った。その後、最終評価として初期評価と同様の条件下で運動負荷試験を行った。なお本研究は当法人の倫理委員会の承認を得て実施した。

    【結果】ATに関して、初期評価時平均が8.3±4.3(ml/min/kg)であったものが、最終評価時は16.2±7.8(ml/min/kg)に増加した。最高酸素摂取量に関して、初期評価時18.8±5.0(ml/min/kg)であったものが、最終評価時は22.6±3.8(ml/min/kg)に増加した。

    【考察】全ての症例において、運動期間中のEM駆動時間の延長ができ、また運動の落伍者もいなかった。ATについては、エルゴメーターで再現性と検出率が高いとの報告があることからも、エルゴメーターを用いたATレベルでの心拍定常負荷運動は、慢性脳卒中患者において安全であることが認められ、かつ心肺機能に良好な影響を与えることが示唆された。今後は症例数を増やし、有酸素運動能力向上について更に詳細な検討が必要である。
  • *阿部 陽子, 沖田 啓子
    理学療法学Supplement
    2005年 2004 巻 250
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/04/27
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】今回前頭葉症状を中心とした多彩な高次脳機能障害を有する症例で、特に注意障害に注目し、早期より環境に配慮して言語的行動調整を試みながら歩行訓練を施行した。その結果、歩行能力の改善が認められたので紹介する。
    【症例】50歳代の男性 くも膜下出血、脳内出血(右前頭葉・皮質下血腫)にて発症。発症1病日に前大脳動脈瘤のクリッピング術を、発症4病日にステレオ血腫除去術を施行する。発症39病日に左片麻痺と高次脳機能障害に対し、リハビリ目的にて当院へ入院。
    【入院時より2週時点の所見】[神経学的所見]BRS:左上肢4、左手指5、左下肢2~3。反射:深部腱反射は左右上下肢共に亢進。バビンスキー反射陽性。ホフマン反射陰性。感覚:左上下肢の表在、深部覚軽度鈍麻。[神経心理学的所見]意識清明でコミュニケーションの問題はないが、注意の持続性・選択性・転導性の欠如を認め、病識は乏しい。多弁であり、話題提示・転換が急である。意味記憶、短期記憶は保たれているが、エピソード記憶はまだらであり、易怒性。他者の口頭指示による動作には従う事が困難。MMS:14/30点。TMT A:3分46秒 B:6分(途中中断)数唱:順唱4桁 逆唱4桁 [CT所見]:右前頭葉・頭頂葉・後頭葉にLDAを認める。[姿勢]立位:右上肢は柵を把持して引き込み、右下肢で保持する。左の踵は全く接地せず、骨盤は後傾している。また、静止は困難で非麻痺側で動き出そうとする。左側体幹の崩れ、左膝折れがある。
    【方法及び結果】環境は次の4条件を設定した。1.右耳聴覚遮断(耳栓)、2.右視覚遮断(壁)、3.右耳聴覚遮断+右視覚遮断(耳栓+壁)、4.環境設定なし。それぞれの条件の元、長下肢装具を装着し2人介助で歩行訓練を行うが、麻痺側を残したまま非麻痺側で勝手に前進してしまい、訓練実施困難。そこで自己による言語的行動調整を上記の4条件に加えて行った。始めに立位をとり、「手すり」→「左足」→「右足」と本人が声を出した。この上で2人介助による歩行訓練を行った。自己による言語指示が学習されるまでは介助者も共に声を出した。言語指示を行いながら最も効果的であったのは、右視覚遮断であった。繰り返す度に麻痺側に対してのリズムの遅れ、歩幅の調整など、気付きが多くなり介助者との歩行順序が合いやすくなった。2人介助であるが振りだし・体幹保持介助ともに介助量が低下し、2週間後には一人介助で短下肢装具、最終的には自立へと至った。
    【考察】本例の言語的行動調整は、自己の言語指示でフィードバックし、左側への注意を向ける事ができた。また、視覚を調節して自己による言語的行動調整が有効であった。これらにより動作イメージに関する情報が得られ、歩行能力の改善が認められたと考えられる。
  • ―プリズムアダプテーションを施行した一例―
    *新井 由美子, 野崎 宏伸, 五十嵐 久巳, 市来 詩織, 一場 道緒, 松田 雅弘, 高橋 博之, 網本 和
    理学療法学Supplement
    2005年 2004 巻 249
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/04/27
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】半側空間無視(以下USN)は、ADL自立度に影響を及ぼす要因であることが知られ理学療法施行困難な例も少なくない。今回右被殻出血により左片麻痺を呈し、重度のUSNと軽度のpusher現象を伴い起居移動動作困難であった症例に対し、発症早期より約7ヶ月間通常の理学療法に加えプリズムアダプテーションを施行し、USNは残存するものの動作の獲得に至った。本研究では多角的なアプローチを記述しその長期治療経過について検討した。
    【症例および開始時所見】67歳女性。診断は右被殻出血による左片麻痺(H.16.2.9発症)。他院を経てH.16.2.27より当院PT開始。神経学的には意識清明、感覚脱失、左同名半盲、左片麻痺(Brunnstrom Stage上肢、下肢、手指ともII)を認めた。神経心理学的にはHDS-R17点、構成失行、pusher現象、著明な左USNを認めた。基本動作全介助で特に坐位バランスは不良であり、ADLはBarthel Indexで10点であった。
    【理学療法アプローチ】1.基本動作に対する姿勢保持、立ち直り反応の促通を中心に理学療法を行った。2.プリズムアダプテーション:体幹正中位認知テストとして、車椅子座位の被験者正面にテーブルを顔面から50cmに設置し、閉眼にて主観的正中位置を示指で差し誤差を、10回計測した。このテストをプリズム課題の前後に施行した。プリズム課題は、右7度偏光のプリズム眼鏡を装着し、被験者の肩および上肢が見えない状態で、テーブル上の棒を見ながらテーブル下方にある目標に対するリーチ動作を50回行った。
    【理学療法経過】H.16.2.27より理学療法開始。頚部の右回旋に加え、pusher現象のため正中位での坐位保持困難。3.16より長下肢装具を装着した立位、歩行訓練を追加。移乗はほぼ全介助。3ヶ月pusher現象を軽減させる目的で肋木を利用しての訓練を開始。顔面はほぼ正中に向き、坐位保持可能。4ヶ月:移乗ほぼ自立。車椅子自走可能となり障害物の回避可能。歩行は長下肢装具使用、中等度介助。7ヶ月:歩行は長下肢装具使用、軽介助。Brunnstrom Stage上肢、手指II、下肢III~IV。Barthel Indexは55点となった。
    【神経心理学的所見の経過】線分抹消試験については1ヶ月後9本消去、3ヶ月後22本消去、最終評価時36本消去可能となった。体幹正中位認知テストはプリズム課題前17.5cm右方偏倚がアダプテーション後で11.5cmへ変化し、注意が左方向へ改善した。
    【考察】本症例は比較的早期の経過であるため自然回復による改善が含まれていると考えられるが、主要な問題点であるUSNに対してはプリズムアダプテーションが改善方向に作用したと考えられる。一方の問題点である起居移動動作困難に対しても同様に早期歩行を中心としたプログラムが奏効したものと考えられる。重度なUSNを伴う症例に対しては、通常の理学療法に加え神経心理学的な方法を適用することが重要であることが示唆された。
  • *市来 詩織, 新井 由美子, 網本 和
    理学療法学Supplement
    2007年 2006 巻 1294
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】今日超高齢化社会を迎え介護予防とリハビリテーションは要介護高齢者及びその家族,介護担当者にとり重要な課題である.近年,比較的元気な高齢者に対する転倒予防の取り組みは広く施行され,その評価方法も確立されつつあるが、一方歩行困難な高齢者の移動能力の評価方法に関する検討は十分でない.そこで本研究の第一の目的は車椅子操作能力について一定の形式で再現可能な評価方法を提示し,その結果が臨床的妥当性を有するかを検討する事である.第二の目的はこれらの結果が他の身体機能的指標及びADL自立との関係性を検討し,効果的なアプローチの方略を示す事である.
    【対象】車椅子操作が可能な脳血管障害を伴う要介護高齢者で施設入所者11名,通所リハ利用者7名(平均年齢78歳)の18名とした.内訳は脳梗塞9例,脳出血8例,その他1例で全例発症から6ヶ月以上経過した症例であった.左片麻痺11例,右片麻痺7例で下肢運動麻痺の程度は中等度から軽度であった.なお,研究の趣旨を説明し書面にて同意を得た.
    【方法】1.車椅子操作能力課題(スラロームテスト)は,4m間隔の2つの目標物を8の字に回り開始点まで戻るテストで,左回り,右回り各々2回ずつ施行し所要時間を計測した.また,VTR撮影を行いすり抜ける際のパターンを記録した.2.身体機能評価課題として座位Functional Reach Test(以下,SFRT),30秒間手すり使用にて立ち上がり反復動作(以下,HSCS30)を施行した.SFRTは車椅子に座り肩関節屈曲90度の位置で指示棒(117cm)を壁面に対して持ち,体幹を前傾させ指示棒が縮んだ距離を5回測定した.また,FIMとエレベータ操作能力を評価した.3.分析は対象者をエレベータ操作能力の自立・非自立に分け,各項目の成績をMann-Whitney検定を行い,更に各因子間の相関分析を施行した.
    【結果】1.エレベータ操作自立群(n=9)のスラロームテストの成績は平均39.0秒で,非自立群(n=9)の54.7秒に対して小さい傾向を示した.SFRTでは自立群38.2cm,非自立群34.2cm,HSCS30では自立群9.2回,非自立群9.7回と有意差は認めなかった.2.FIMとの相関分析では,スラロームテスト:-0.31,SFRT:0.23,HSCS30:0.32を示し互いにある程度の関連を示すが大きくはなかった.3.スラロームテストのすり抜けパターンでは,半側無視を呈する症例は患側に回る時に大きく軌道を逸脱する傾向が認められた.
    【考察】歩行困難症例の車椅子操作能力を把握する為に一定の走路での評価が必要であるが,座位でのバランスや立ち上がり能力に比べ,スラロームテストの成績が施設内での車椅子自立に必要なエレベータ操作能力と関係があった事は,このテストの妥当性を示している.今後症例を重ね検討していきたい.
  • *北野 望, 武村 啓住, 亀田 美智江, 関戸 涼子, 渡邉 隆, 高橋 一郎
    理学療法学Supplement
    2007年 2006 巻 1293
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】眼球の律動的運動で、他覚的に容易に認められる程度のものを眼球振盪または眼振と呼ぶ。病的眼振には、健康者にも特殊な条件の下で現れる生理的眼振と眼球・脳・神経の病変によっておこることがある。本症例は橋出血によって垂直眼振を呈し、歩行障害に影響を及ぼしていた。今回、発達運動学的アプローチによって理学療法を施行したところ眼振の改善とともに歩行障害も改善された。ヘルシンキ宣言に基づき本人の同意を得たのでここに報告する。

    【症例紹介】症例は50代女性で、某年12月13日清掃作業中に倒れ橋出血と診断された。翌年4月14日の時点では、Br.S右半身III~IV・左VI、右上下肢には不随意運動があり伸展優位であった。眼球運動は垂直眼振・右内転左外転運動困難・下方運動制限があった。平行棒内歩行は軽介助から近位監視レベルだが、不随意運動に加え眼振による視力障害によって、視覚からのフィードバックが困難な状態であった。ニードとして歩行獲得と眼振改善を求めていた。

    【治療方法】まず最初に、上下に動いている眼球を上方へ固定することで眼振を改善できないかと考えた。一般に筋は伸張されると収縮しやすくなるといわれており、一端を固定することで他端が引き寄せられる。この性質を生かして下顎を抵抗点として後頸部の筋を伸張することで後頭下関節の伸展運動を集積させ、眼球の上方固定を試みたが、眼振改善は見られなかった。次に、眼球を側方に引っ張ることで、眼振改善を考えた。頸の回旋の前提条件として後頭下関節の伸展運動が必要となるので、それを出した上で項線と頬骨を抵抗点として斜角筋群を伸張させて頸の回旋運動を促通し集積させた。結果、眼振は一時的に改善したためこの方法を眼振に対する治療として継続して施行した。

    【治療結果】治療開始9週後、眼振の振幅は上下約12mmから約6mmに減少した。歩行器歩行は監視レベル、静止立位保持時間は2分程度可能となった。自覚症状としては、「障害物がよけきれず、ぶつかり危険だったがよけることができるようになった。」とのことだった。

    【考察】橋出血の眼症状として内側縦束症候群などがあるが、小脳・脳幹による眼振の病態解明はされておらず、特別な治療法は確立されていない。最初は単純に上下方向の眼球の動きを上方へ固定することで眼振を改善できないかと考え、治療を行ったが改善困難であった。そこで、眼球運動の理想的発達では、1~1.5ヶ月で追視(頭部の動きに先行して眼球の水平運動)が可能となり、7ヶ月で体幹の垂直化がおこり、眼球の上下運動が可能となることを考慮して、より容易な水平運動の促通を施行した。最初に施行した上下運動に対する促通は発達運動学的に難しい運動であったため眼振を改善できなかったが、水平運動の促通は発達運動学的に容易な運動であったため眼振を改善することができたのではないかと考えられる。
  • *西村 由香, 吉尾 雅春, 村上 新治, 松本 博之
    理学療法学Supplement
    2007年 2006 巻 92
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】これまで脳卒中患者の自覚的かつ視覚的に判断された垂直位(以下、SVV)は地球に対する垂線とずれがあるなどの研究報告がなされている。臥位で行われた報告もあるが、多くは座位で行われ、立位で行われた報告はみられない。今後SVVの理学療法への活用のためには立位でのSVVを踏まえる必要がある。そこで、脳卒中片麻痺患者の座位および立位でのSVVを調べ、比較検討することを目的とした。
    【対象】研究協力の同意が得られ、立位を保つことができた脳卒中片麻痺患者21名と、健常成人20名とした。患者の平均年齢は65.7(48~82)才、男性16名、発症からの期間は平均107.3(9~329)日、右片麻痺6名、左片麻痺15名(うち、左半側空間無視6名)で、下肢Brunnstrom stage2:1名、3:7名、4:6名、5:6名、6:1名であった。健常成人の平均年齢は26(22~38)才、男性5名であった。
    【方法】SVV検査には、独自のSVV検査装置(ICC=0.900)を用いた。本装置は視覚補正を防ぐため、内壁を黒色に塗装し外からの光が入らないようにした円筒型をしているものである。装置の窓を覗くと2×100mmの光の軸だけが見え、窓の下にあるハンドルを回すことで光の軸は回転する。対象者は窓に顔を密着させ、ハンドルを回し任意に傾いた軸を自分が垂直と感じるところまで調節した。検査中はその上から黒色布で覆い、窓からの光の侵入を防いだ。光の軸の傾きは外から確認でき、対象が決定した軸の傾きをデジタルカメラで撮影し、画像ソフトSion Imegeにて地球に対する垂線からの偏位角度を求めた。3回の平均値を測定値とし、時計回りの傾きを+とした。座位および立位の姿勢は検者がコントロールすることはなく、自然な姿勢で、両眼、矯正視力で行った。各対象の座位と立位でのSVVを比較した。加えて、各姿勢における脳卒中片麻痺患者と健常成人のSVVを比較した。
    【結果】脳卒中片麻痺患者のSVVは、座位平均 -3.31(-8.04~1.14)度、立位平均 -1.93(-7.92~3.69)度で有意差があった(p<0.05)。健常成人では、座位平均0.02(-3.53~3.21)度、立位平均0.41(-3.37~4.56)度で差みられなかった。発症から9日目の下肢Brunstrom stage2の患者で、座位でのSVVが-8.04度であったのに対し、立位では-0.54度であった特徴的な症例が存在した。また、脳卒中片麻痺患者と健常成人のSVVの比較では座位(p<0.001)、立位(p<0.05)ともに有意な差がみられた。
    【考察】脳卒中片麻痺患者のSVVは、座位と立位で違いがみられ、姿勢による影響を受けていると考えられる。1症例から姿勢の難易度というよりも意識や注意の変化によると考えられた。さらなる検討によってSVVの結果から理学療法アプローチの一助を得るものと考えられる。
  • *森下 元賀, 網本 和, 山田 隆介, 馬場 志, 新井 由美子, 松田 雅弘
    理学療法学Supplement
    2007年 2006 巻 91
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】脳血管障害患者において、不安定板上の座位で他動的に座面を傾斜した状態から自動的に水平に戻すまでの過程および最終姿勢(行動的垂直)を分析することが座位バランスや身体軸の偏倚を評価する上で有用であるとの報告がある。姿勢制御には様々な感覚系の影響があるが、今回の研究では視覚情報が姿勢制御に及ぼす影響を不安定板上での座位で明らかにすることを目的に検討を行なった。
    【対象】対象は自力で端座位保持が可能な脳血管障害による左片麻痺6例(平均年齢60.2±12.9歳、114.7±32.8病日)、右片麻痺9例(平均年齢65.3±9.9歳、129.1±39.0病日)であった。全ての被験者に研究の趣旨を説明し、書面にて同意を得た。本研究は本大学院の倫理審査委員会の承認を得て行った。
    【方法】測定は不安定板(バランスボード)上で足底非接地条件で行なった。課題は座面を10°傾斜させた状態から座面が水平になるまでを開眼と閉眼の条件で随意的に行なわせた。傾斜は非麻痺側へ傾斜する方向からそれぞれランダムに二試行ずつ行い、開眼条件の後に閉眼条件を行なった。被験者後方からのビデオ撮影を行い、画像解析は被験者の頭部・体幹・座面に反射マーカーを貼付し、その画像から動作分析ソフト(DKH社製Frame-DIAS2)を用いて二次元の角度を算出した。座面傾斜時から最終姿勢までの各部位の角度変化は傾斜前から最終姿勢までの範囲を比較した。最終姿勢は座面が水平に近づいて安定した状態とし、上部体幹および座面の偏倚角度を測定した。角度変化は時計回りを正の方向とした。
    【結果】座面傾斜前から最終姿勢に至るまでの各部位の角度変化を比較すると、右片麻痺、左片麻痺ともに上部体幹と下部体幹のなす角度が閉眼条件で小さい傾向があった。最終姿勢の比較では、左片麻痺例における麻痺側傾斜で座面の傾斜が開眼条件0.5±3.0°、閉眼条件-3.7±3.1°で有意に麻痺側傾斜が大きく、上部体幹の身体軸は開眼条件-1.9±5.2°、閉眼条件3.5±4.4°で有意に非麻痺側に傾斜していた。右片麻痺例の麻痺側傾斜では座面の傾斜が開眼条件0.7±3.4°、閉眼条件-1.4±5.2°で有意に非麻痺側への傾斜が大きかった。非麻痺側傾斜においてはいずれも有意差を認めなかった。
    【考察】閉眼条件のほうが上部体幹と下部体幹のなす角度が小さい傾向を示したことは、視覚情報の欠如によって体幹の動きが小さくなり、より上部体幹と下部体幹の分離した動きが困難となると考えられた。最終姿勢の分析では麻痺側傾斜において閉眼によって右片麻痺では重心が非麻痺側へと移動していたが、左片麻痺においては麻痺側に重心が移動しており損傷側による反応パターンが異なっていた。すなわち左右の麻痺毎にパターンが異なることから治療方略についてもこの相違を考慮すべきものと考えられた。

  • CT分類、出血量、意識、脳浮腫からの検討
    *高倉 保幸, 高橋 佳恵, 大住 崇之, 大隈 統, 小牧 隼人, 河原 育美, 加藤 悠子, 若林 稜子, 草野 修輔, 山本 満, 陶山 哲夫
    理学療法学Supplement
    2006年 2005 巻 14
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/04/29
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】脳出血で最も高い割合を占める被殻出血では、血腫の進展を示すCT分類や出血量、意識障害と予後との相関が高い事が知られているが、急性期病院の平均在院日数である発症後3週での予後との関係は明らかにされていない。また、臨床的には急性期の機能的予後にはCTにおける脳浮腫の程度と相関が高いという印象を持っているが、その評価基準は確立されていない。本研究の目的は、急性期被殻出血の機能的予後を予測する指標について検討することである。
    【方法】対象は当院にて初回発症で理学療法を行った被殻出血47例とした。年齢は60.1±10.7歳(平均±標準偏差)、性別は被殻出血が男性32例、女性15例であった。予後予測の因子として検討した項目は、脳卒中の外科学会によるCT分類(以下CT分類)、総出血量(長径×短径×高さ÷2)、出血径(長径)、脳浮腫、発症時意識(JCS)、発症翌日意識(JCS)とした。脳浮腫の判定は独自に3段階の評価基準を作製、いずれのレベルでも脳溝の狭小化がみられないものを1、脳溝の狭小化がみられるものを2、モンロー孔のレベルから3cm上部での病巣側の脳溝が消失しているものを3とした。基本動作能力の判定には11項目からなる改訂された機能的動作尺度(以下FMS)を用いた。FMSの検査時期は21.9±2.0日であった。各因子とFMSおよび因子間におけるスピアマンの相関係数を算出し、基本動作能力の予測に有用な因子を考察した。
    【結果】各因子およびFMSの結果をみると、CT分類の中央値はIII、総出血量の平均は36.8ml、出血径の平均は4.7cm、浮腫の中央値は2、発症時意識の中央値はII-10、発症翌日の意識の中央値はI-3、FMSの平均は14.8点であった。FMSとの相関は、CT分類では0.64(p < 0.01)、総出血量では0.61(p < 0.01)、出血径では0.57(p < 0.01)、脳浮腫では0.55(p < 0.01)、発症時意識では0.14(p = 0.34)、発症翌日意識では0.29(p = 0.45)となった。また、浮腫との相関は、CT分類では0.40、総出血量では0.50(p < 0.01)、出血径では0.54(p < 0.01)となった。
    【考察とまとめ】機能的予後を予測する指標としてはCT分類、出血量、脳浮腫が有用であることが示された。出血量では総出血量を算出する方が指標としての精度は高くなるが、長径により代用する方法も簡便で有用であると考えられた。新たに作製した脳浮腫の評価は予後と有意な相関を示し、CT分類や出血量と強い相関を示さないことから評価指標としての有用性が示された。意識はリハ開始前の死亡例が除かれていることおよび発症3週間という短期間で調査であることから相関が低くなったと考えられたが、発症日の意識よりも発症翌日の意識を指標とする方が有用であることが示唆された。
  • 直接トレーニングとの比較
    *網本 和, 松田 雅弘, 野崎 宏伸, 新井 由美子, 一場 道緒, 五十嵐 久巳, 市来 詩織, 二瓶 篤史
    理学療法学Supplement
    2006年 2005 巻 13
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/04/29
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】ミラーセラピーとは、Ramachandran(1995)が上肢切断症例の幻肢痛治療として施行した方法で、片麻痺の麻痺側上肢手指機能について報告されている。しかし片麻痺下肢機能の回復、改善も重要な治療目標であり、下肢機能の向上はきわめて重要である。また従来の研究ではミラーセラピー施行時に、患側肢について健側肢に合わせて自動的運動を行う方法と、他動的運動を行う方法とが報告されており、ミラーのみの効果は検討されていない。本研究では片麻痺下肢機能に着目しミラーセラピーの効果を直接運動課題と比較検討することを目的とした。
    【対象】研究の趣旨を説明し同意の得られた、発症から4ヶ月以上経過した慢性期の片麻痺症例14例(右麻痺5例、左麻痺9例、年齢平均65歳)を対象とした。下肢運動麻痺の程度は中等度から軽度であった。
    【方法】下肢用ミラーボックスを作成し、内側全面に収まるようミラーを矢状面上に配置し、椅子坐位姿勢の被験者の一側下肢がその中に入るようにした。ミラーボックス上面から実験中は鏡像のみが被験者から観察できるように隙間を残し、上部カバーで被った。運動課題として、足長軸に対して直角におかれた高さ3センチの円柱状の段差を乗り越える課題を10回施行した。実験条件はまず麻痺側下肢で上記課題を行い(プレテスト)、大転子、膝関節中央、外果、第5中足骨頭に反射マーカーを貼付し側方に配置したデジタルビデオカメラにより撮影し画像解析ソフトによって関節角度および課題遂行時間を分析した。次に健側下肢をミラーボックスに置き、ミラーを見ながら3分程度同様の課題を行うがこのとき麻痺側下肢は動かさなかった(ミラー条件)。対照実験として麻痺側下肢でその課題をそのまま3分行う条件(直接条件)を施行した。その後麻痺側下肢で再度上記課題を行い同様な測定をした(ポストテスト)。条件の開始順序はランダムとし、同一被験者に二つの条件を約1週間の間隔をおき施行するクロスオーバーデザインとした。統計学的分析はWilcoxon検定を用いた。
    【結果】足関節背屈角度は、ミラー条件の前後で1.6度背屈方向に変化し、直接条件の前後で0.8度底屈方向に変化したが有意差は認めなかった。膝関節角速度変化率は各条件とも17%有意に増大した(p<0.05)が条件間差はなかった。一回あたりの課題遂行時間はミラー条件の前後で3.19秒から2.80秒へと有意に短縮し、直接条件でも同様に短縮したが有意ではなかった。運動麻痺が重症な症例では。直接条件に比べミラー条件の成績が良好となる傾向を認め、軽症例では逆の傾向を示した。
    【考察】両条件とも膝関節角速度変化率の増加と課題遂行時間の短縮が認められた。健側鏡像運動の視覚的入力による課題遂行の変化は、単に直接的な運動だけでなく認知的側面からのアプローチの重要性を示唆している。今後ミラーセラピーの適応と限界を含め症例を集積してゆきたい。








  • 小峰 光博, 前川 正
    臨床血液
    1979年 20 巻 7 号 691-699
    発行日: 1979年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル 認証あり
    A series of comprehensive survey study was conducted during 1974∼1976 under the sponsorship of Hemolytic Anemias Research Committee, the Ministry of Health and Welfare, Japan (Chairman, Professor Shiro Miwa, Yamaguchi University), with the principal purposes of evaluating the current status of the two representative types of hemolytic anemia, i. e. autoimmune hemolytic anemia (AIHA) and hereditary spherocytosis (HS).
    Relevant clinical and laboratory data were generously provided for analysis by 160 major institutions and clinics on 141 cases with AIHA and 144 cases with HS. Extensive analysis of these materials yielded sufficiently detailed informations on a variety of clinical aspects of the disease, which are of essential importance for the adequate understanding and effective management of these diseases.
    Included were onset-age distribution, heredity and familial occurrence, clinical picture at diagnosis, routine and special hematological examinations, biochemical and serological features, treatment and its effectiveness, side effects, clinical course, and overall prognosis.
    Characteristic features were outlined individually for AIHA and HS, while several problems awaiting forthcoming clarification were pointed out, including the particular need for elucidation of the eventual development and long-term prognosis of AIHA and also for the recognition and management of HS during neonatal period.
  • 網本 和
    日本基礎理学療法学雑誌
    2009年 12 巻 2 号 5-8
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/09/28
    ジャーナル オープンアクセス
  • 大畑 正敏
    色材協会誌
    2010年 83 巻 9 号 394-403
    発行日: 2010/09/20
    公開日: 2010/12/20
    ジャーナル フリー
    水性塗料は塗装過程における揮発性有機化合物(VOC)の削減にきわめて有効であるが,媒体である水が揮発性や極性など特異な性質を示すため塗装作業性や耐水性などに大きな問題を生じさせる。水性塗料を構成する樹脂は一般的に有機物であるため水中で分散形態をとる。その結果,立体的な視点を加えた樹脂の設計や水の存在をうまく利用した架橋系の設計が可能となる。その反面,加水分解反応に起因する水性樹脂,とくにポリエステル樹脂の安定性には注意を払わなくてはならない。本稿では,各塗料分野における水性化動向に触れたのち,代表的な水性樹脂の設計や架橋系設計に必要な視点をわれわれの開発事例に基づいて述べた。
  • 亀ヶ谷 忠彦, 藤田 貴昭, 相馬 正之
    ヘルスプロモーション理学療法研究
    2021年 10 巻 4 号 189-193
    発行日: 2021/01/28
    公開日: 2021/01/29
    ジャーナル フリー

    [目的]車椅子の方向転換や加速・減速といった駆動のスキルの評価に用いる測定・評価法の絶対信頼性および相対信頼性を,健常成人を対象として検証すること。[方法]検者は作業療法士2名,被検者は健常成人36名(男性15名,女性21名,平均年齢21.3±0.6歳)とした。車椅子に着座した被検者は8の字型の測定コースを上肢駆動,最大の努力で走行し,測定コースの走行に要した時間が測定された。測定値の絶対信頼性はBland-Altman 分析,相対信頼性は級内相関係数(2.1)を用いて検討した。[結果]測定値の系統誤差として比例誤差を認めたが加算誤差は認めなかった。測定値の級内相関係数(2.1)は0.999,95%信頼区間は0.999-1.000であった。[結語]本研究で開発された車椅子駆動速度の測定・評価法は測定値が内包する誤差の特性が確認され,また高い検者間信頼性を示した。

  • 庄司 重陽, 菊池 裕子, 村田 勝俊
    医学図書館
    1986年 33 巻 4 号 370-377
    発行日: 1986/12/20
    公開日: 2011/09/21
    ジャーナル フリー
  • 遠藤 久夫
    医療と社会
    1998年 8 巻 2 号 183-206
    発行日: 1998/07/06
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    本研究の最終的な目的は,医療システム内のさまざまな取引の原理を市場原理と計画原理に分類し,この二つの取引原理の補完作用がシステムのパフォーマンスにどのように影響を及ぼすのかを知ることであるが,本稿ではその第一段階として,1)医師と保険者との間の取引関係,2)医療保険のアンダーライティング,3)営利病院と機会主義,に着目して,それぞれ以下の知見を得た。
    1)医師(医療機関)と保険者との関係に見られる市場原理と計画原理の補完関係
    (1) 医師のモラルハザードを抑制するためには医師と保険者との取引関係が計画原理に基づく場合の方が市場原理に基づく場合より効果が高いと考えられる。しかし,それが患者(保険加入者)の利益になるかどうかは保険者が患者の有効なエージェントとなりえるかどうかに依存する。
    (2) 医療システムの取引原理が市場原理か計画原理に過剰に依存している国は, カウンターパートの取引原理の導入によってパフォーマンスの改善を図ろうとする。具体的にはアメリカのマネジドケアの進展は市場原理に対する計画原理の導入と捉えられるし,イギリスのNHS改革は計画原理に対する市場原理導入のケースである。
    2)医療保険のアンダーライティングに関する市場原理と計画原理の補完関係
    (1)私的保険は危険選択による不平等の発生,逆選択や高い取引コストなどによる非効率を生じさせるためそれ単独で医療を保障している先進国はない。
    (2)多くの先進国では公的保険と私的保険を組み合わせることによって医療保険が行われている。組み合わせのパターンはいくつかに類型化でき,それぞれによって私的保険の財としての特性が異なる。
    3)市場原理と機会主義の関係情報の非対称性が存在し,第三者支払制度が介入する医療においては医療供給者に機会主義が発生する可能性がある。利潤動機が機会主義を誘発するという仮説に基づき,アメリカの病院の行動と所有形態との関係を観察すると,営利病院は非営利病院と比較して機会主義的行動がより多くとられていることがわかった。
feedback
Top