本研究の目的は,台湾の新聞における紙面の変遷について調べることを通して,今後の新聞デザインに資することである。台湾における新聞の歴史を概観した結果,4つの時期に大別されることが分った。本稿はその第1報として,日本統治時代(1895〜1945)および終戦後から報禁実施(1945〜1955)までの時期について調べたものである。調査の結果,台湾における最初の日刊新聞紙は日本統治時代に日本人により創刊されたものであり,台湾入の皇民化が目的であった。
日本の新聞製作技術で作られた当時の新聞は紙面が日本の新聞
と酷似しており,ここで台湾の新聞スタイルの雛型が固められた。1945年,終戦後,国民政府の台湾遷移が行われ,台湾の新聞は徐々に日本統治時代の新聞スタイルの影が薄まっていった。その後,各新聞社が中国出身の記者・編集経験者を多く採用したことから,中国の新聞づくりの慣習が取り入れられ,台湾独自の新聞スタイルが徐々に出来上っていった。新聞は政治的道具として位置付けられて発展してきたなか,紙面デザインにはその変遷が大き<反映されることが明らかになった。
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