目的: 再生医療の実現において, ヒト胚性幹細胞は拒絶反応や倫理的問題からその臨床応用は困難と考えられていたが, 近年iPS細胞の樹立により体細胞から多能性幹細胞を得ることが可能となり, 臨床への応用が期待されている. 特に
樹状細胞
は, 自己免疫疾患やアレルギーの発症抑制や抗腫瘍免疫療法などへの応用などが期待されており, iPS細胞誘導
樹状細胞の作製は樹状細胞
の臨床応用の観点からも高い意義を持つと考えられる. そこで本研究ではマウスiPS細胞から
樹状細胞
への分化誘導法の検討を行った.
材料および方法: マウスiPS-MEF-Ng-20D-17細胞をGM-CSFなどを用いて4段階に分けて培養を行い,
樹状細胞
へと分化誘導を試みた. 培養後の細胞に対して形態学的解析, フローサイトメーターを用いた細胞表面分子の発現解析, 外来抗原の取り込み能, CD4 T細胞への抗原提示活性化能の解析を行い,
樹状細胞
としての機能を備えているか判断した.
結果: 本培養方法において, 形態学的には樹状突起をもち,
樹状細胞
マーカーであるCD11cの発現が認められる細胞がiPS細胞から誘導された. その成熟性に合わせて抗原提示細胞として必要なCD80, CD86, MHC class II, CD40の発現も認められた. 外来抗原の取り込み分解能も備え, CD4 T細胞の活性化も骨髄細胞誘導
樹状細胞
と同等かそれ以上の能力を備えていることが示された.
結論: 今回の培養方法によりiPS細胞から
樹状細胞
を誘導することが可能であると考えられた. 将来的にヒトに応用できれば,
樹状細胞
を用いた治療方法の選択肢の一つになる可能性が示唆された.
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