使いこんだフライパンは油なじみがよく焦げつきにくいが, この現象を摩擦係数との関連性において検討した結果,
1) 鉄試験片の未処理材A, 空焼き材B, 油塗布加熱材C, 空焼き後油塗布加熱材Dの摩擦係数を測定したが, C, Dは小さく, 特にDは最小であった.
2) 油を薄く塗布して測定した場合, 初動摩擦係数はどの試験片も0.2程度で油潤滑効果が認められたが, 摩擦時間に伴う摩擦係数はDが最小であり, したがって
油切れ
は生じにくいことがわかった.
3) ブラッシュ洗浄をした場合でも, 油塗布加熱処理をすると吸着皮膜が再生するためか摩擦係数が小さくなった.
4) D試験片の表面層を赤外線分析した結果, 特にカルボン酸鉄塩が認められたことから, 油中の脂肪酸と金属とが表面の酸化物と水の介在によって金属石ケンを作り, これが化学吸着膜となって潤滑効果をもたらすため油なじみをよくすると考えられる.
5) ホットケーキを焼いて実用実験を行った結果摩擦係数と焦げつき性とは相関関係があることが認められた.
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