老年者の不整脈について, 一般集団および入院患者における成績について報告した.
1. 同一固定集団における長期追跡成績: 18年間にわたり2年に1回の周期で心電図その他の連続追跡調査を行った. 対象は最終観察期の年齢が約40~90歳の6,690例である. 心房細動, 心房性期外収縮, 完全右脚ブロック, 左脚ブロックなどの頻度は60歳以後の年代では著明に高いが, 60歳代から80歳代までの老年群において, 年齢と共にほぼ直線的に増加することが認められた.
2. Holter 心電図による検討: 14歳から87歳の健常者164名を対象とした. 標準12誘導で不整脈のあった例は除外してあるが, Holter 心電図では心房性期外収縮を159例, 96.9%の高率に認めた. 心房性期外収縮の24時間総数, 連発性心房性期外収縮の有無, 24時間中のその回数および最大連発数, などのすべてにおいて, 60歳以上の老年者では60歳以下の群に比べて有意に著明な高値を示した.
3. 発作性心房細動 (Paf) 症例の心房電気生理的所見: Pafのリエントリーの生じ易さの指標として, 洞調律時の心房内記録によるA波の幅の増大とその棘波数の増加, 心房期外刺激による反復性心房興奮波の誘発, について検討した. Paf群では対照のPaf (-) 群に比して両指標とも有意に高値であった. Pafのない
洞不全症候群
も Paf群とほぼ同程度の異常を示したが, 本症候群が老年者に多い不整脈であることを考え合わせると, Paf群の心房電気生理的所見の異常は一種の老年性変化によるものと考えられた.
4. 一過性の高度低K血症による高度徐脈例: 80歳以上の比較的軽度の腎不全の2例で一過性の高K血症, 高度洞徐脈および洞停止, 意識障害を生じた例について述べた. 高K血症は腎不全のみでは説明がつかず, 血漿アルドステロンの低値とACTHおよびアンジオテンシンIIに対する低反応から, 低アルドステロン症が主な要因と考えられた.
抄録全体を表示