本研究の目的は,昭和20年代後期から昭和30年代前期における
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教育の必修化に際して,「
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法」学習が学習内容として定着・固定化したことを指摘することにある。
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教科書の検討を行った結果,(1)入門単元においては,返り点/送りがな,再読文字の学習が定着したこと,(2)入門単元以外の各単元では特殊句形に注目する学習が構想されていたこと,(3)巻末などに「
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法」の系統的な理解を支える一覧表がふされたこと,が指摘できた。これらの変化の要因としては,(1)教科書編修の場に対し,実践者の側から「
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法」を充実させることが求められていたこと,(2)実践者は,「
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を訳読する力」の育成を重視していたこと,(3)大学入学試験が「
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を訳読する力」を重要視していたことが考えられ,三者の相互作用によって,学習内容としての「
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法」が定着・固定化したのではないかと指摘した。
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