2010 年代以降,社会学の領域では,子どもの福祉の観点から不登校児童生
徒の学習機会をいかに保障するかが喫緊の課題である.だが,先行研究の知見
では,就学援助や学習支援等の学校制度内の施策に焦点が当たる一方で,その
外部の学びの多様性が看過されてきた.とくに教育機会確保法(通称)の成立
以降,不登校児童生徒への管理が高まりつつあると言われるなか,学校外の学
び場が,日常的な活動場面でいかなる困難に直面しているかが看過されている.
そこで本稿は,ケイパビリティ・アプローチ(CA)の視点から,1)教育機
会確保法の成立以降,日本の義務教育段階で不登校児童生徒への支援がいかに
展開されつつあるか,及び,2)こうした政策動向のもと,学校外の居場所を
掲げるフリースクールの活動がいかなる葛藤に直面しつつあるかについて考察
した.
結果,同法の成立以降,学校制度の内外で,不十分だが,経済的支援や休養
の必要性も含めた多様な学習機会の拡充(財・サービスの配分)が検討され始
めていること,他方で,フリースクールの現場は,従来の多目的な「居場所」
という意味づけに代わり,特定の目的を有する「支援施設」としてのまなざし
を受け始めており,子どもの日常をめぐり,「生きづらさの仕分け」と呼びう
る機制が生じつつあることが明らかになった.以上の議論から,今後,子ども
にとって,「何もしないこと」も含めた実質的自由が保障される制度設計が重
要になる.
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