ハッサク(Citrus hassaku hort. ex TANAKA)の果皮は,成熟するにこつれ色調の変化がみられるが葉は常緑である,そこで果皮と葉の色調とカロチノイドおよびクロロフィル色素の間にどのような関係が存在するかを調べた.
(1) 果皮の色調と色素量の変化の関係は,次の3段階に分けられた.第1は,クロロフィルが多量存在するためカロチノイドの量に関係無く果皮が緑色の段階,第2は,クロロフィルが急激に減少したため,カロチノイド量は最小であるが果皮が黄色に変色する段階,第3は,クロロフィルは消失し,カロチノイドが増加したため果皮が黄橙色に変化する段階である.
(2) 葉のカロチノイド量は30~40mg/100g,クロロフィル量は40~180mg/100gと変化しており,果皮に比べいずれも多量含まれていた.葉が常緑であるのは全期間を通してクロロフィルがある一定量以下に減少しないためである.すなわち葉は(1)で述べた果皮の3段階の変化のうち常に第1の段階にあると言える.
(3) TLC法によって分離された果皮のカロチノイドのうち,Hは成熟が進むにつれ減少し,DD, Mが増加した.カロチノイドパターン(カロチノイド量の多い順に3位を並べる)は,緑色時にはH-D-DD型からD-H-DD型に変化し,さらに変色時にはD-DD-H型からDD-D-H型に移行し,これらは着色が進むにつれDD-D-M型からDD-M-D型に変化していった.
(4) 葉のカロチノイド組成は果皮に比べ変化が少なく,新葉の時H-D-DD型であった以外は,常にD-H-DD型が保たれていた.このように果皮の緑色時と緑葉のカロチノイド組成は似ており,色調とカロチノイド組成の間には密接な関係があることが分った.
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