2003年の穂いもち多発時に, 分光放射計により計測した幼穂形成期頃のイネの植生指数と収穫期の穂いもち被害度の間に指数関数的な関係が認められた. そこで, 2004年に施肥体系により植生指数の異なる稲群落を用意し, いもち病発生との関係を検討した. その結果, 出穂前の植生指数と穂いもち被害度との間には指数関数的な関係があり, 特に出穂30日前頃の植生指数と密接な関係が認められた. また, 出穂前の植生指数と葉いもち発生との問にも指数関数的な関係が認められ, 出穂期に近づくほど重相関係数が大きい値となった. 一方, 葉いもち発生量と穂いもち被害度の間には, いずれの時期でも, 直線的な関係が認められた. これらのことから, 出穂30日前の植生指数は, 葉いもちの感受性と密接に関連し, 複数回伝染環を繰り返す葉いもち発生量とは指数関数的関係となり, 穂いもちの伝染源となるため, 出穂前の植生指数と穂いもち被害度の間にも指数関数的関係が見られたと考えられる. また, 穂いもち被害度は, 植生指数がある閾値を超えると急増した. 分光放射計により測定したイネの植生指数は, 追肥要否判定などに用いられるが, 同時に圃場の穂いもち発生リスクの相対評価に利用できるとともに, いもち病の発生が抑制される生育量の上限を明らかにできる可能性が示された.
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