症例は42歳男性. 約10年前より糖尿病と診断され, インスリン治療を受けていたが血糖コントロールは不安定であった1全身倦怠感と排尿困難を主訴として当科入院. 入院時, 空腹時血糖168mg/d
l, HbA1c7.3%, 眼底Scottma, 尿中微量アルブミンは陰性であった. 下肢腱反射の減弱, 末梢神経伝導速度の低下, 及び安静時心電図R-R間隔変動係数低下を認め, 末梢神経障害及び自律神経障害を合併していた. 排尿動態検査で残尿量は25m
lと少なかったが, 膀胱内圧測定にて低圧, 低緊張型を示し, また尿流量率は著明に低下していた. 膀胱頸部閉塞性疾患は認めず, 典型的な糖尿病性
神経因性膀胱
と診断した. そこで, 選択的α1-adrenergic blockerである塩酸ブナゾシン3mg/日を投与したところ, 自覚的な排尿困難の消失とともに, 尿流量率の著明な改善を認めた. 糖尿病性
神経因性膀胱
の薬物療法の1つとして選択的α1-adrenergic blockerが有効であると考えられた.
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