以上の分析から明らかなように,昭和53年度末に東京から
筑波研究学園都市
に移転した研究者は移転の前後でその生活のパターンを大きく変化させた.その変化の方向は,「
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では,移動と交際の時間が大幅に減少し,それが執務時間にあてられ,執務(研究)は勤務先以外に自宅でも行われ,研究所と公務員宿舎の間を自動車で往復するという単純な生活パターンになっている.」と表現できる.一方,配偶者については,これだけの環境条件の変化にもかかわらず,移転前後で生活行動パターンにはほとんど変化がみられない.
はじめに述べたように,
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の計画は職住近接によって研究の効率を向上させようという意図を持っていた.この調査から判断すれば,通勤時間の減少は研究時間の増加になって表れている.その限りにおいては,研究の効率は上がっているかもしれない.しかし,その反面,生活パターンは単純化されてしまい,生活の多様性が失われてしまった.このような環境が長期的にみて,創造的な研究活動を生み出すのかどうか,まだ判断をすることは難しい.科学万博を契機として新しく整備されている様々な施設が,研究者にとってその研究生活の活性化につながるものとなってくれることを期待したい.このような調査を今後も継続的に実行して行きたいと考えている.
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