生活
算術
は大正末期から昭和初期にかけて展開された教育運動であり,わが国の
算術
教育が現代性を獲得する過程で注目すべき実践の総体である。しかし,生活
算術
の全体像は今日においてなお明確にされているわけではない。本稿は生活
算術
の全体をとらえるための基礎的研究として,生活
算術
実践家の一人である藤原安治郎の実践に焦点をあて,その実践の具体的様相を理解しようとするものである。本稿では大正末期から昭和初期の藤原の
算術
教育実践について,「生活」,「数理」,及び両者の関係を中心に時系列的に検討した。その結果,藤原の
算術
教育実践は「生活」から「数理」を切り離してそれぞれを独立してとらえる過程で,両者を結びつける統一原理として「函数観念」が意識され,「生活」と「数理」は循環作用をもつものとなった。更に「数理」を中心概念として「生活」をとらえ,「数理」の会得が生活力の基礎であると主張するに至っている。このような変容の過程は4つの時期に区分できた。
抄録全体を表示