タネの図書館は1970年代以降,世界中で多く設置・運営されているインフォーマルシードシステムの一部である.欧米では[コミュニティ・シードバンク」と呼ばれていることも多い.タネの図書館が持つ機能と管理システムは国,地域,構成メンバーにより様々であるが,タネ保存という目的は共通している. 本研究では韓国におけるタネの図書館の特徴と,タネの図書館のインフォーマルシードシステムにおける位置づけを,現地調査と聞き取りにより明らかにし, 種子システムの全体の新しい理解と展開を示した. 韓国において1997年に起きた金融危機により,有力な国内種苗会社のほとんどが多国籍企業に買収され,韓国の作物遺伝資源も海外の多国籍企業に渡ることになった.2008年には
米韓
FTA
が締結され,食への関心が高まり,食料主権・種子主権など権利意識が芽生えた.そのため,韓国のタネの図書館ではタネを保存することを食料主権運動と考えており,社会的な問題と関わっていると考えている.国際的な動向からみると韓国のタネの図書館はNGOでありながら,行政からの支援を受け入れると共に活動における官民協力が密接に行われていることから「セミフォーマルシードシステム」であると評価した.最近では,韓国のタネの図書館は食料主権とタネに関する伝統知識の保存と未来への伝達という新しい目的を元に活動しており,新しいインフォーマルシードシステムの展開につながる新しい動向であると考える.
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