【はじめに】
当デイケアでは平成27年度より、利用者を地域社会への参加へ繋げていくためにリハビリテーション会議(以下、リハ会議)を有効的に活用している。その中でも、外出に対して利用者家族が消極的であった症例に対しリハ会議を通して自宅周辺の外出評価を繰り返し行った結果、最終目標であった
老人会
への入会には至らなかったが、自宅近くの商店への買い物までは可能となった症例を報告する。
【症例紹介】
70代女性。X年Y月にくも膜下出血発症。半年後に要介護1を取得し、退院直後より当デイケア利用開始。ADLは自立レベル(FIM:115/126点)。HDS-R:20/30。発症前まで鮮魚市場で接客担当として勤務するなど、人との関わりを好んでいた。発症後は息子夫婦と同居するため、別の土地へ転居。自宅外への外出が乏しい状況であった。
リハ会議開始時、屋外等の不整地では5分ほどで左右へのふらつきが出現するため見守りレベルであった。自宅内IADLでは洗濯物を干す、たたむといった家事を実施していたが、外出に関しては家族と1ヶ月~2ヶ月に1回ほど買い物に行く程度であった。本人希望は、地域の中で多くの方々と交流を持ちたいとのことだったが、家族は外出先での転倒を不安視し、本人の外出に対し消極的であった。
【リハ会議の方法】
家族希望により自宅でのリハ会議を6ヶ月間実施。近隣商店および
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が開催される公民館への外出評価を中心に行い、目標に沿ったリハビリ計画を作成した。家族にも同席して頂き、本人の外出時の歩行状態や商店までの経路確認を実施。ケアマネージャー、デイサービス職員、福祉用具業者も同行することで、外出という統一した目標に対し、サービスの連携を図った。
【経過】
リハ会議開始~2ヶ月:リハ会議の方針は、外出に向けた歩行耐久性の向上、
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の情報収集であった。リハビリでは立位バランス向上に向けた下肢筋力向上と公民館までの歩行耐久性向上に向けて自主練習の促しを行った。
リハ会議開始3ヶ月~4ヶ月:会議の中で近隣商店への買い物評価を実施。家族も同行し、本人の状態を確認して頂いた。リハビリでは院内歩行練習を中心に実施。商店と自宅との約270mの距離を往復できるよう、20分間の連続歩行を課題とした。結果として院内20分間の連続歩行は獲得。実際の商店への買い物では、歩行中のふらつきはほぼ消失したが車に注意して歩くことに見守りを要す段階であり、夫の付き添いがあれば可能な状態であった。
リハ会議5ヶ月~6ヶ月:最終目標である公民館までの経路を確認し、家族も
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への参加に好感触をみせ、実際に
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を見学する予定となった。リハビリでは屋外20分間の連続歩行と公民館の段差昇降獲得を目標にアプローチを実施。
【結果】
リハ会議6ヶ月後の結果として、近隣商店まではT杖にて一人で買い物が実施可能となった。
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が開催される公民館までの経路は道順に多少の不安を残し、他者の付き添いを依頼することとなった。後日
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の見学に行った結果、入会には至らなかった。
【考察】
外出に対して家族が消極的な症例に対し6ヶ月間の継続的なリハ会議の中で、家族が一緒に同行し、屋外での本人状態を確認して頂いたことで家族の外出への不安が解消した。またリハ会議の構成員が外出という統一した目標に対してサービス提供を実施できたことも結果に繋がったと考える。
【倫理的配慮,説明と同意】
本発表はヘルシンキ宣言に沿っており、本人・家族には発表の趣旨を説明し、書面にて同意を得た。
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