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  • ―後十字靭帯温存vs. 切離での比較検討―
    *石井 義則, 野口 英雄
    中部日本整形外科災害外科学会学術集会 抄録集
    2008年 109 巻 1-D-6-5
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/08
    会議録・要旨集 フリー
  • *儀間 智子
    九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
    2010年 2010 巻 95
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    今回、対人緊張が高い為関わりが難しく外出に対しても抵抗がある症例に対して、雑誌コーナーの雑誌購入を導入した結果、退院してピアノ教室に通いたいと口に出すようになった。振り返りを行い考察を加えたので報告する。
    【症例紹介】
    30歳代女性。19歳、人と付き合い難くなり家へ閉じこもる。21歳、薬学に通うが寮生活で対人関係上手くいかず不登校となる。帰沖し復学試みるが、自主退学する。33歳、多量服薬しA病院の5階から飛び降り、興奮状態で当院入院となる。関わり当初、単語での返答多く近くに座ると自ら離れていき関わるのが困難であった。雑誌や化粧品を一人で見て過ごす場面が多く見られた。
    【方法と経過】
    『雑誌コーナーの雑誌購入』月に1回個別で行い、1.楽しむ体験2.自信の回復を目的とした。OTRから誘い、雑誌を2~3冊程度選んでもらう。〈BR>症例が他患と雑誌や化粧をしているOTRの姿を見る事から始め、同じ机で雑誌を見ながら徐々に会話を図り購入へ誘った。購入初回時には拒否もあった。移動中の車内では、OTRが1~2回話しかけるのみで帰りは笑っている表情が多く見られた。初めは常にOTRの後ろから歩いており、多くの雑誌の中から選ぶ事が出来ず、立ちすくむ場面が見られた。その為、「購入月の前後や読んだ事のある雑誌から選ぶと選びやすいよ」と段階付けを行い読みたい本(漫画)の選択が出来る様になる。その頃と同時期にOTRの前を歩くようになり、買いたい雑誌や漫画の棚に積極的に足を運ぶようになる。また、会計後の雑誌を積極的に持つようになる。
    【結果】
    OTRに対して、感情を表出したり、「家に帰りたい、ピアノ教室に通い、○○の40番を完成させたい」と話すようになる。
    【考察】
    今回、対人緊張が高く関わり難い症例に対して、興味がある雑誌を通して個別での雑誌購入を導入した。雑誌購入は、将来に関わる大きな決断ではない事やOTRからの誘いから受容的な参加が可能な状況が参加しやすく、選んだ雑誌に対してOTRに肯定される体験から安心感が生じたと考える。安心感から次第に自分の読みたい雑誌を意思表示出来るようになり買えた満足感や購入した雑誌をホールに来て見る事、女性らしさを意識する本人の楽しみから継続して購入に至っているのではないか。また、他者が手に取り読む姿を見て「この雑誌でよかった」と喜ぶ姿や賞賛される体験が自信に繋がったと考える。今回の雑誌購入は、(1)流行の服や髪形を気にする、(2)自分を変えたいと感じる機会と症例自信から生じる喜びが大きかったと考える。結果として現在では、以前やり残した「家に帰ってピアノ教室に通いたい、曲を完成させたい」という希望をOTRを含め他者へ意思表示する様子が伺えるようになった。今後は、本人の気持ちを引き出していきながら意思を固めていく。活動でもピアノを取り入れていき糸口を見つけていく。
  • ―矢状面のLaxityに着目して―
    *坂下 大, 高橋 賢, 木賀 洋, 石井 義則, 野口 英雄, 武田 光宏
    関東甲信越ブロック理学療法士学会
    2009年 28 巻 31
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】当院の先行研究では,後十字靭帯(PCL)温存型人工膝関節全置換術(TKA)の術後膝関節可動域は,PCLが影響を及ぼすと推察され(2007関東甲信越ブロック理学療法士学会,2008日本理学療法学術大会),矢状面Laxityとの関連性も認められる(2008関東甲信越ブロック理学療法士学会)と報告してきた.今回,PCL温存型TKAにおいて,引き出し力,人工関節の拘束性,軟部組織の緊張により構成される矢状面Laxityの膝関節屈曲肢位による差に着目し,術後6ヶ月時獲得膝関節屈曲可動域を比較することで,PCL温存型TKAの術後可動域に対する理学療法について考察した. 【対象】平成14年6月から平成20年6月までに,外傷歴のない変形性膝関節症により当院にてPCL温存型TKA(機種:LCS Total Knee System(Depuy))を施行した70膝関節(男性:5関節,女性:65関節,平均年齢:71歳)を対象とした.手術は全例同一術者により施行され,後療法は術後翌日より全荷重を許可し,可動域については抜糸まで自動運動を,抜糸以降は他動運動も加え実施した. 【方法】本研究の同意を得た後,術後6ヶ月時に,膝関節屈曲可動域測定および膝前後方向総変移量(Total A-P displacement:TD(単位mm))を測定した.TDの測定方法は,測定肢位は膝関節屈曲位30°,75°とし,KT-2000 Knee Arthrometer(MEDmetric)を用い,113Nの前方引き出し力と89Nの後方引き出し力を加えたものを3回計測し,その平均値を算出した.その後,TDが30°より75°の方が大きい群をA群,30°より75°の方が小さい群をB群と分け,A群とB群の膝関節屈曲可動域の比較を行った.統計処理は、ウェルチのt検定を用いた.(有意水準5%). 【結果】全体の平均膝関節屈曲可動域:112.6±14.2°,平均30°TD:7.8±3.9,平均75°TD:8.6±4.2であり,A群は44関節(30°TD:7.1±4.0/75°TD:9.7±4.3),B群は26関節(9.2±3.6/6.7±3.4)に分類された.平均膝関節可動域はA群:115.6±12.2°,B群:107.7±16.2°であり,有意差が認められた.(p=0.038). 【考察】本デザインは,前後方向の拘束性はないことを考慮すれば,本結果より75°屈曲位での矢状面Laxityが大きい方がroll-backを誘導しやすく,大きな可動域が得られやすくなる可能性が示唆された.今後,画像を含めた追評価の必要もあるが,本デザインにおいて屈曲位での,より大きな矢状面Laxityを得られるような後療法を考慮する必要性が示唆された.
  • 後十字靱帯温存および切離での比較検討
    *坂下 大, 石井 義則, 木賀 洋
    関東甲信越ブロック理学療法士学会
    2007年 26 巻 78
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/30
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】人工膝関節全置換術において術後獲得可動域に与える因子は数多く報告されているが、概ね術前の可動域が主要因であることは一致する見解である。今回、前向き調査として後十字靱帯(以下、PCL)温存型と切離型との周術期(術前、術中、術後退院時)における可動域の変化に着目し、PCLの影響について検討した。 【対象】平成14年8月から平成18年8月までに、術前に全例変形性膝関節症と診断され、当院にて人工膝関節全置換術を施行した症例90例100関節(男性12関節、女性88関節、平均年齢72歳、平均在院日数42日)を対象とし、PCL温存型(50関節)、PCL切離型(50関節)に分類した。手術は全例同一術者により施行され、機種は脛骨側のみセメントを用いたhybrid New jergy LCS Total Knee System(Johnson&Johnson,Depuy,Warsaw,IN)を使用した。術後の理学療法は翌日より全荷重を許可し、術後1週目までは自動関節運動を行い、2週目以降は他動的関節運動も実施した。 【方法】各症例に本研究の同意を得た後、無作為に2群に分け、術前、術中、術後退院時の可動域を測定し比較を行った。統計学的解析はWicoxon’s rank sum testとSpearman’s correlation of rank coefficientにより処理を行った。なお、有意水準は5%とした。 【結果】可動域の推移(中央値)は、PCL温存群では術前、術中、術後退院時(122.5°、120.0°、100.0°)、PCL切離群(115.0°、120.0°、95.0°)であり、各時点での有意差は認められなかった。両群で術前と術中、術前と術後退院時にそれぞれ有意な相関が認められた。一方、術中と退院時との相関はPCL温存群(r=0.063、p=0.665)で、PCL切離群(r=0.503、p<0.001)であり、切離型のみに有意な相関が認められた。 【考察】PCLは屈曲に伴い、緊張が強くなることを考慮すれば、温存されたPCLによる影響が示唆され、術前(PCLの変性の程度)、術中(剥離などのPCLの操作)、術後(Joint Lineの変化に伴うPCLの緊張の変化)などが、2群間の術中と術後退院時の相関の差に反映されたと推測される。退院時の平均獲得可動域の有意差は認められないものの、可動域の変化を予測しうることから、術後リハビリテーションを進める上でPCL切離型のほうが優位であることが示唆された。
  • ―覚醒時と麻酔下の比較より―
    木賀 洋, 石井 義則, 武田 光宏, 野口 英雄, 坂下 大, 高橋 賢
    理学療法学Supplement
    2009年 2008 巻 P1-469
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/04/25
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】当院では後十字靭帯温存型での人工膝関節全置換術(以下;TKA)後の矢状面Laxityについて覚醒時、麻酔下で比較検討を行い報告した(2006日本理学療法学術大会).今回、後十字靭帯切離型での矢状面Laxityを軟部組織の緊張の差異および拘束性の差異で比較し、TKA術後のLaxityに対するリハビリテーションアプローチについての留意点を考察することを目的とした.
    【対象】2000年9月から2007年5月の80ヶ月間に外傷歴のない変形性膝関節症により当院にてTKAを施行した症例20例20膝関節(男性3名、女性17名、平均年齢72.7歳)を対象とした.手術は全例PCL切離型で同一術者によって施行され、機種はLCS Total Knee System(Depuy)を使用した.
    【方法】本研究に説明と同意を得た症例に対し、矢状面Laxityへの軟部組織と拘束性の影響を考慮するために覚醒時及び麻酔下(反対側手術時:平均術後期間19ヶ月)それぞれの膝関節屈曲30度(高拘束性)、75度(低拘束性)で測定を行った.測定にはKT2000 Knee Arthrometer(MEDmetric)を使用し、膝前後方向総変移量(total A-P displacement;TD)を計測した.TDについては133Nの前方引き出し力及び89Nの後方引き出し力を加え、各3回計測後(検者内誤差:0.5mm未満)、平均値を算出した.統計学的処理は覚醒時、麻酔下での30度TD、75度TDを二元配置分散分析にて比較検討した(有意水準5%).
    【結果】覚醒時と麻酔下の平均は30度TDで5.1±2.1mmと6.7±2.9 mm、75度TDでは7.0±2.0mmと7.7±3.4mmであった.覚醒時、麻酔下での比較では有意に麻酔下で大きく(p=0.026)、30度TD、75度TD間では低拘束性で有意にLaxityは大きかった(p=0.001).一方、2要素間(軟部組織、拘束性)に有意な交互性は認められなかった(p=0.193).
    【考察】本研究よりLCS PCL切離型TKAのLaxityについては軟部組織の緊張の有無、人工関節の拘束性(切離型では回旋方向のみに拘束性がない)の高低が独自に影響していることが明らかとなった.拘束性、軟部組織の緊張はそれぞれ独自に弛緩性(Laxity)と関連があることから、術後リハビリテーションの場合は画一的なLaxityを求めるのではなく、関節デザインや軟部組織の緊張を考慮して行うべきである.
  • 手術までの疼痛期間に注目して
    *木賀 洋, 石井 義則, 高橋 賢, 坂下 大
    理学療法学Supplement
    2007年 2006 巻 285
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】人工膝関節置換術の術後リハビリテーションを展開するうえで可動域獲得は疼痛除去とともに重要な項目である。これまで術後膝関節可動域については術前可動域が影響しているという報告もあり、臨床上でそうした症例を多く経験する。そこで今回、術前の膝関節可動域が術後の膝関節可動域に関連しているかを検証するとともに、主訴である疼痛に注目し、荷重時痛を生じてから手術までの期間(以下、疼痛期間)と術後の膝関節可動域の関連についても調べることを目的とした。
    【対象】平成14年11月6日から18年5月10日までに外傷性を除く変形性膝関節症に対し当院にてハイブリッド人工膝関節置換術を施行した症例78例91関節を対象とし、PCL温存群44関節(男性4名、女性40名、平均年齢72.1±7.0歳、平均入院日数42.4±19.3日)と切除群47関節(男性7名、女性40名、平均年齢74.4±6.8歳、平均入院日数43.9±25.5日)に分類した。機種は全例モービルベアリング型LCS人工膝関節システム(Depuy社)を使用し、PCL温存・切除の選択は無作為に行われた。術後の理学療法は、翌日より全荷重を許可し、術後1週目までは自動関節運動を行い、2週目以降は他動的関節運動も実施した。
    【方法】術前に問診し、疼痛期間について調査を行った。膝関節可動域は術前、術中(麻酔下)、術後(1ヶ月時)に測定した。PCL温存群と切除群それぞれにおいて術前と術後の膝関節可動域、疼痛期間と術後の膝関節可動域の関連を分析した。統計学的解析はピアソンの相関係数算出(Statvie-J5.0)により処理を行った。なお、有意水準は5%とした。
    【結果】PCL温存群では術前平均疼痛期間が6.7±5.4年、膝関節可動域は術前118.9±19.7°(屈曲平均126.7°、伸展平均-7.8°)、術中121.3±6.8°(121.7°、-0.5°)、術後97.8±16.7°(104.1°、-6.3°)であった。PCL切除群では術前平均疼痛期間が7.2±6.0年、膝関節可動域は術前110.6±21.7°(123.2°、-11.6°)、術中116.3±12.11°(117.4°、-1.1°)、術後93.0±18.7°(100.2°、-7.3°)であった。術前と術後の膝関節可動域についてはPCL温存群でr=0.4、p=0.007、PCL切除群でr=0.5、p=0.0006であった。疼痛期間と術後膝伸展可動域についてはPCL温存群でr=0.03、p>0.05、PCL切除群でr=0.042、p>0.05であった。
    【考察】術後1ヶ月における膝関節可動域は術前可動域との間に有意な関連を認めたが、手術に至るまでの疼痛期間との関連は認めなかった。今後、術前の疼痛の影響を分析していく上では、疼痛による二次的要因についても評価していく必要がある。
  • ―Pick up歩行器での歩行をゴールとした背景について―
    *野田 宗史, 高橋 賢, 木賀 洋, 谷口 豪, 石井 義則, 野口 英雄, 武田 光宏
    関東甲信越ブロック理学療法士学会
    2008年 27 巻 78
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】大腿骨頚部骨折骨接合術術後の早期荷重とラグスクリューの過度のTelescopingとの関係や、cut-outに至り抜釘を施行した症例に関する報告は散見される。しかし今回、大腿骨頚部骨折骨接合術によりT-caneにて退院後、骨粗鬆症が原因でラグスクリューが骨頭を穿破、臼蓋へ陥入することによる疼痛が出現したため抜釘を施行し、後に偽関節となった症例において、下肢の支持性へのアプローチやゴール設定に影響した背景などについて考察したので報告する。
    【症例紹介】68歳女性。平成19年3月転倒により受傷。翌日当院でCHS固定術を施行。同年5月、術後8週目にT-cane歩行で退院、週2回の通院でリハビリを行なった。しかし徐々にラグスクリューの臼蓋への陥入による荷重時痛が出現し増悪したため、同年7月に抜釘を施行しリハビリを再開した。
    【リハビリテーション経過】抜釘前の筋力は左股関節周囲MMT2~3、T字杖歩行は自立していたが、左下肢の荷重時痛が強く全荷重は困難であった。抜釘後、下肢筋力低下(左股関節周囲MMT2、左膝関節伸展3)や6cmの脚長差(棘果長 右73.0cm/左67.0cm)のため、サークル歩行にて左下肢立脚時に股関節・膝関節屈曲位でつま先接地していた。これに対し3cmの補高を装着し、内側広筋の促通、大殿筋と腹筋群の同時収縮を促す運動を行い、左立脚期に股関節・膝関節伸展位での足底接地が可能となった。5週目で荷重量は増加し、荷重時痛も軽減した。9週目にPick up歩行器での歩行可能となったが、左立脚期において墜下性跛行が著明であり、中殿筋の促通と股関節外転装具により跛行は軽減された。20週目には左股関節周囲MMT2、左膝関節伸展5となり、四脚杖での歩行が可能となったが、装具装着下においても左立脚時の跛行が未だ認められたため、Pick up歩行器使用での退院となった。しかし本人の満足度は低く再手術を強く望んでいたが、骨粗鬆症に加え骨萎縮が著しく再手術は困難と診断されており、障害受容での関わりでは難渋した。
    【考察】本症例は骨粗鬆症であり、大腿骨頚部骨折後に偽関節を呈したという経過において、股関節の支持性は著しく低下していた。この症例に対して荷重時の筋機能改善や補高・装具の装着など、下肢の支持性向上へ積極的にアプローチしたことで、歩行能力の改善が見られたが、残存能力から転倒リスクを考慮した上でPick up歩行器での歩行をゴールとした。また障害受容の面では、本症例を通して骨粗鬆症から生じた骨折治療の予後や、残存能力での転倒リスクなどについて早期から理解を促すことの重要性について考えさせられた。
  • ―感染コントロールに難渋した症例―
    *藤沼 佳奈, 高橋 賢, 木賀 洋, 石井 義則, 野口 英雄, 武田 光宏
    関東甲信越ブロック理学療法士学会
    2008年 27 巻 47
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】変形性膝関節症では,高い除痛効果が期待できる人工膝関節全置換術(以下TKA)を施行する患者は多いが,約1%の割合で術後感染症を合併するとされている.当院では,平成10年2月~平成18年10月までに施行したTKA220例中1例(0.5%)に術後感染症を認めた.今回,右TKA術後難治性感染症によりコンポーネント抜去に至り,荷重関節としての膝関節が機能しない状態が長期化した症例に対し,疼痛や炎症を管理しながらのリハビリに難渋したが,膝関節硬性装具の導入や精神的ケアも含め,医師・看護師・理学療法士が連携して関わった結果,術前程度の日常生活動作が可能となった症例を経験したのでここに報告する.
    【症例紹介】82歳,女性,元保健師 既往歴:子宮癌・大腸癌・左変形性膝関節症・腰椎圧迫骨折・右脛骨骨折
    【経過】平成15年頃両膝痛出現し,平成18年1月当院受診.術前検査において貧血高度・便潜血を認め,他院にて精密検査の結果大腸癌と診断され,同年3月大腸癌の手術施行.同年10月に当院入院.術前,右膝関節可動域は屈曲/伸展100°/-20°であり,移動はピックアップ歩行(以下歩行器)又は車椅子にて自立.同月右TKAを施行し,翌日より全荷重,立位練習を開始する.1週間後,歩行器で約30m歩行可能となるが,翌日疼痛増悪・出血が認められ,血液検査の結果CRP高値となりリハビリ一時中止となる.その後,患部外運動のみ許可され,残存機能維持目標にリハビリ再開する.その間,2度関節内洗浄するが感染症状治まらず,抗生剤含有セメントスペーサー留置を施行し立位可能となる.しかし,疼痛および感染コントロール出来ず,平成19年3月中旬に人工関節抜去術施行となる.その後,化学療法が効を奏し,右下肢へのリハビリが再開された.下肢筋力・耐久性は向上し,膝関節硬性装具により側方動揺を抑える事で疼痛も軽減した.入院中の外泊時に術前程度の日常生活動作が可能となり,屋内歩行が自立したため同年9月上旬自宅退院となった.
    【考察】本症例は術後感染症への治療に難渋し,炎症症状の管理の中でのリハビリという状態が長期化した.荷重や運動量に制限が続き,歩行への不安が増していったが,他患者や看護師との会話や屋外への散歩等で気分転換を図り落ち着きを取り戻した.また本人・家族が医療従事者であり,治療方針について十分な理解を得た上で様々な治療を行う事が可能となった.本症例を経験して,本人・家族への説明や受け入れが治療に大きな影響を与え,医師・看護師と連携をとり治療方針を決定し,チームでの関わりの重要性を改めて実感することができた.
  • *関谷 進, 高橋 賢, 木賀 洋, 石井 義則, 野口 英雄, 武田 光宏
    関東甲信越ブロック理学療法士学会
    2008年 27 巻 17
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】人工膝関節全置換術(以下TKA)後の大腿骨遠位端骨折を発症し,観血的整復固定術を施行した症例において,受傷機序として考えた膝関節不安定性に着目した理学療法を行い,良好な結果を得たので報告する.
    【症例紹介】82歳女性.平成9年に右TKA,11年に左TKAを施行し,術後は屋内を独歩,屋外をシルバーカー又は電動三輪車の活動レベルまで獲得されていた.平成19年6月に屋内で50cmの段を昇ろうと右足を踏み込んだ際,転倒せずに右大腿骨遠位端骨折(AO分類33-A)し,受傷後8日で人工膝インプラントを温存し,プレート固定を施行した.理学所見として右膝関節麻酔下manual maxが外反2°,内反8°と外側へ動揺性を認めた.また対側下肢の膝関節可動域110°/0°(屈曲/伸展),股関節周囲筋力MMT4,膝関節伸展筋力5,姿勢の特徴として円背を認めた.術後は3週間ギプス固定,6週でニーブレースを装着下で部分荷重を開始した.
    【経過】術後4週の時点で,内側広筋弱化,膝蓋骨可動性低下が確認され,膝関節可動域40°/-5°,股関節周囲筋力MMT2,膝関節伸展筋力2であった為,関節可動域,膝関節周囲筋力の改善に対し理学療法を実施した.まもなく,膝関節可動域65°/0°,9週で支柱付き膝装具を使用し,膝関節伸展筋力MMT3となった.この時,右立脚中期に外側thrustと右膝関節外側に疼痛が新たに出現した為,運動連鎖を考慮し股関節内旋・外転筋筋力増強を追加した.10週より全荷重を指示され,11週より歩行器歩行練習を開始した.17週で股関節周囲筋力MMT4となり,外側thrust,歩行時の荷重時痛も軽減し,歩行器歩行自立となった.21週より四点杖歩行練習を開始し,40kgまで荷重可能となるが,不安定性と荷重時痛は残存していた.荷重練習を継続し,25週で四点杖歩行自立となった.膝関節可動域は65°/0°であった.
    【考察】本症例の受傷機序について,術後10年経過し骨粗鬆症による脆弱性を生じていた事に加え,右膝関節不安定性によるコンポーネント上部での負荷を加え続けた事により疲労骨折が引き起こされたものと考える.術後経過が四点杖歩行自立となった要因は,対側下肢の残存機能が高かった事や骨癒合が良好に進む中で,右膝・股関節周囲筋力が改善された事,支柱付き膝装具で補強した事から,自立に至ったと考えた.今回の様に,骨の脆弱性に加え,TKA後に関節不安定性がある症例に対し,早期から膝・股関節周囲筋力増強,支柱付き膝装具により関節安定性の補助を行い,関節周囲の負荷を軽減する事が骨折予防になると考える.また今後,動揺性を伴うTKA後のリハビリフォローアップとしてブレース装着など骨折予防を考慮した指導の重要性が示唆された.
  • ―術後感染治療のため人工膝関節抜去した症例に対するリハビリテーションの経験―
    *小平 怜, 高橋 賢, 木賀 洋, 石井 義則, 野口 英雄, 武田 光宏
    関東甲信越ブロック理学療法士学会
    2008年 27 巻 16
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】人工膝関節全置換術(以下TKA)術後,今回右膝化膿性関節炎を生じたため,抗生剤含有セメントスペーサー挿入術を施行し,発症前の移動やADL動作を再獲得した症例を経験した.その理学療法の経過と移動能力の改善の要因について考察したので報告する.
    【症例紹介】73歳・女性
    【経過】平成4年他院にて両側TKA,平成15年に再置換術施行.平成17年4月頃から右膝関節に炎症症状を呈し,平成19年6月に当院にて右膝化膿性関節炎と診断された(CRP値2.79mg/dl).以後毎日,関節内洗浄を実施するが消退せず7月に当院入院.右人工膝関節抜去術,抗生剤含有セメントスペーサー留置術を施行し,感染消退後に再置換術を予定していた.術前右膝関節可動域は屈曲100°伸展0°,移動は独歩で行い,電動三輪車も使用していた.医師より右外側側副靭帯軽度残存,右内側側副靭帯消失,右膝関節可動域は予後不良であることを示唆され,術後2週間まで抗生剤点滴投与(1日2回)と,理学療法は2週間シーネ固定下でtoe-touch荷重から開始となった.術後翌日より右膝関節可動域への介入はせず,腫脹軽減,残存機能維持を目的にアプローチした.固定終了後,本症例が再置換術を希望しなかったため,セメントスペーサーを留置した状態で可及的に荷重歩行を許可された.理学療法ではADL自立を目的に行い,歩行練習,可動域練習も適宜開始した.荷重の際,右膝関節の疼痛,外側thrustがみられたが,両側金属支柱付き膝装具を装着することで症状が軽減し,同時に歩行器で病棟内生活が自立した.3週目の右膝関節可動域は屈曲85°伸展-5°,MMTは股関節周囲筋4,膝関節伸展筋3となり,レントゲン上でのアライメント異常はみられなかった.CRP値も改善し(0.19 mg/dl),抗生剤経口投与となった.4週目に両松葉杖,5週目にT杖歩行となり,膝関節伸展筋4に改善した.ADL動作も円滑になり,6週目に退院となった.退院後の右膝関節可動域は屈曲105°伸展0°であり,電動三輪車での外出も可能となった.
    【考察】セメントスペーサーでは支持性や可動域において問題が残存すると考えられていたが,装具での補強,筋機能改善,早期から荷重練習が許可されたことにより,歩行練習を行うことが可能となった.この結果,関節炎発症前の活動レベルまで達することができ,本症例の満足度は高い.しかしセメントスペーサーは本来歩行に耐えうる構造ではないため,長期的に再置換術を見据え,経過を観察し理学療法を行っていくことが重要と考える.
  • ―後十字靭帯温存型・切離型による比較検討―
    *坂下 大, 高橋 賢, 木賀 洋, 石井 義則, 野口 英雄, 武田 光宏
    関東甲信越ブロック理学療法士学会
    2008年 27 巻 13
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】当院では人工膝関節全置換術(TKA)後の矢状面のLaxityについて,屈曲可動域(2003日本理学療法学術大会),後十字靭帯(PCL)温存型・切離型(2005),麻酔下・覚醒時(2006)と比較し報告した.今回,矢状面のLaxityと獲得可動域の関係に着目し,PCL温存群と切離群で比較検討を行い,TKAの後療法について考察した.
    【対象】平成14年6月から平成19年1月までに,外傷歴のない変形性膝関節症により,当院にてTKAを施行した症例88例100関節(男性11関節,女性89関節,平均年齢71歳)を対象とした.PCL温存,切離は無作為に選択し,温存群(53関節,術前平均可動域:117.1°),切離群(47関節,113.0°)であった.手術は同一術者により施行され,機種はLCS Total Knee System(Depuy)を使用した.後療法は術後翌日より全荷重を許可し,可動域に対して抜糸まで自動関節運動,抜糸以降は他動関節運動も実施した.
    【方法】本研究の同意を得た後,術後(6ヶ月,12ヶ月)に,膝関節可動域測定およびKT-2000 Knee Arthrometer(MEDmetric)を用いて膝関節屈曲位(30°,75°)で,113Nの前方引き出し力および89Nの後方引き出し力を加え,膝前後方向総変移量(Total A-P displacement:TD)を3回計測後,平均値を算出し,温存群・切離群で比較検討した.(測定誤差:0.5mm以内).統計処理はウェルチのt検定,スピアマン順位相関係数検定を用いた.(有意水準5%).
    【結果】各時点の平均可動域は,術後6ヶ月(温存群:110.0°/切離群:105.9°),12ヶ月(113.3°/112.9°)と有意差を認めなかった.平均TDは,6ヶ月(30°:7.5/5.3,75°:8.2/6.7),12ヶ月(8.3/5.5,8.7/7.3)と,ともに有意差を認めた.獲得可動域とTDとの相関は,30°TDは両群とも有意な相関を認めなかったが,75°TDでは6ヶ月(r=0.41,p=0.003/ r=0.09,p=0.55),12ヶ月(r=0.49,p=0.0004/ r=0.18,p=0.22)と,温存群のみ有意な正の相関を認めた.
    【考察】両群とも術中操作にて至適バランスは得られているが,温存型・切離型コンポーネントの形状の差が本結果に反映したと推測される.切離型は回旋のみに拘束性がない形状のため,30°,75°でも形状の特性として前後方向の高拘束性を受けるが,温存型では前後方向にも拘束性がないことに,膝関節屈曲に伴いコンポーネント間の拘束性が低くなることが加わることにより,前後のLaxityの大きい方がroll backを誘導し易くなり,各コンポーネントの早期のimpingementが起こらず,大きな可動域を獲得した可能性が示唆された.温存型の後療法は,膝関節の過度のLaxityに留意は必要だが,最良の膝関節可動域を得るためは,術後早期より前後方向の適度なLaxityを獲得することが重要である.
  • ―プロバスケットボールチームへの介入―
    森山 隆, 高橋 賢, 桜井 徹也, 斉藤 祐介, 石井 義則, 野口 英雄
    理学療法 - 臨床・研究・教育
    2012年 19 巻 1 号 27-31
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル フリー
    プロバスケットボールbjリーグのチームに対するメディカルサポートを実施した。サポートは,外傷・障害発生の調査,PT・OTによる介入(個別リハビリ・物理療法),メディカルチェックを実施した。1シーズン平均,外傷・障害合わせて59件,外傷20.5件,障害38.5件であり,外傷・障害を合わせると,足関節,膝関節,手指の順に多かった。介入は,1シーズンの平均はチーム帯同時が177件,当院では60件であった。介入部位は足関節,膝関節,股関節の順で多かった。メディカルチェックの結果,可動域検査では多くの選手に股関節,足関節の可動域低下と体幹の不安定性がみられた。外傷・障害の発生部位で足関節,膝関節が上位を占めるという結果は,他のバスケットボール選手に関する外傷・障害報告と類似していた。外傷と障害の割合については,プロ選手では障害が多かった。障害要因の医学的・運動学的な分析や外傷・術後のリハビリテーションに関しては,専属トレーナーや選手自身では困難であり,ここにスポーツ現場でのPT・OTの専門性・存在意義があると考える。
  • 大澤 啓志, 間野 明奈
    農村計画学会誌
    2019年 38 巻 Special_Issue 号 221-229
    発行日: 2019/11/20
    公開日: 2020/11/20
    ジャーナル フリー

    In this study, we traced the change of a marsh as a local resource in "Ukiya no sato". We considered the resident’s cognitive process in the continuation of the rural landscape conservation activity undertaken by them. We identified 3 sites which had a marsh for about 70 years—from 1948 to the present day. These marshes had been an inefficient use of land for the local community as they yielded high food produce. This has resulted from the natural condition of over-humidity due to the poor drainage. On the other hand, residents have initiated conservation activities for these marsh landscapes as the spring water from the buried valley helps in the formation of a rare wetland plant community, turning the marsh into a natural monument. These marshes have now been transformed into local attractions. Iris ensata var. ensata and Euphorbia Adenochlora were viewed as a distinctive characteristic of these marshes. In our questionnaire survey, about 75% of the respondents recognized that the marsh landscape has been preserved by their activities for 20 years. Though they have done various trouble and hard work in landscape conservation work, about 87% of the respondents felt satisfied with their efforts. The results of a cross tabulation indicated that communication between the residents and pride in their hometown are the factors that affect participation in landscape conservation work. The residents continued landscape conservation work as they recognized that growing of E. Adenochlora involved traditional marsh management techniques such as open burning.

  • ―踵骨骨質の変化よりPTの関わりを考える―
    吉岡 佳介, 桜井 徹也, 野口 英雄, 佐藤 潤香, 石井 義則
    理学療法学Supplement
    2015年 2014 巻 O-0592
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/30
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに,目的】人工膝関節全置換術(以下TKA)は膝関節の除痛が主目的であるが,その波及効果として,これまで身体バランスの改善,筋力の改善,隣接関節の骨密度・骨質の改善などが報告されている。その中で,定量的超音波骨量測定法の減衰係数(以下BUA)を用いた骨質の評価は,股関節の骨塩定量評価法(DEXA)より優れた大腿骨頚部骨折発症の予測法であると報告されている(Stewart A. Calcif Tissue Int 1994)。石井ら(Knee 2004)は,TKA施行群は年齢を合わせたコントロール群より踵骨骨質の高値を報告した。しかし,TKA術後の骨質の変化についての中期的縦断的検討は少ない。今回,予定二期的手術で行った両側TKA症例における5年間の踵骨骨質の変化に着目し,骨質の改善の有無を調査し,今後の理学療法士の関わりについて検討した。【方法】対象は当院にて平成10年から平成25年までに二期的に両側TKAを施行し,術前及び両側術後5年時に計測可能であった変形性膝関節症患者21例42膝とした(男性2名・女19名,術前平均年齢72±6歳)。1脚目の手術側は患者の希望する側,2脚目の手術のタイミングも患者の希望時とした。方法はMcCue CUBA clinical sonometerで,BUA(dB/MHz)を用いて骨質を評価した。表示の数値は,1脚目と2脚目の順で表示し,中央値とした。術前・術後5年のBUA値を比較し,ウィルコクソン符号付順位和検定による統計分析をSPSS Statisticsにて実施した。有意水準は5%未満とした。【結果】手術間隔は11か月(2-66か月)であった。Hospital for Special Surgery(以下HSS)スコアは術前42,40から術後5年で92,93に改善した。1脚目2脚目それぞれにおけるBUA値の検討では,術前値は49と46,術後5年値で56と57であり,それぞれ5%と7%の改善は認めるものの有意差を認めなかった。しかし,42関節での比較では48から56と5%の改善が認められ,有意差を認めた(p=0.0451)。更に14例(67%)で両側の改善が認められた。【考察】Porterら(Br Med J 1990)はBUAを用いた踵骨骨質の計測からその強度の改善は大腿骨頚部骨折のリスクを減少すると報告した。今回の検討から,予定二期的手術で行った両側TKA症例の5年間の踵骨骨質は,有意に改善した。その要因として,HSSスコアの改善から判断してもTKAによる除痛効果で活動量が増加した結果,踵骨への荷重負荷が増え,その骨質の改善に繋がったと推察された。TKA後,有意に身体バランスの改善が認められる(Ishii Y. J Orthop Scie 2013)ことを考慮すれば,骨質及び易転倒性の改善から,TKAは大腿骨頚部骨折の予防になる可能性が示唆された。大腿骨頚部骨折罹患患者の87%は65歳以上(Brody JA. Nature 1985)であり,TKA適応年齢とほぼ一致する。従って,TKA患者へのリハビリテーションは,大腿骨頚部骨折予防のためにも膝関節可動域改善などの局所に留まることなく,退院後に予測されうる能力低下や活動量低下,環境面の問題を入院中のリハビリや退院前自宅訪問などを通して明確化し,TKA施行側に荷重を積極的に促すことや身体バランスの向上を含めたプログラムの構築やフォローアップが大切である。【理学療法学研究としての意義】本研究はTKA術後の踵骨骨質の中期成績を明らかにした研究であり,今後さらにTKA術後の骨質の肯定的な変化が明らかになることにより,TKA術後の付加価値として骨折リスクの予防が期待される。また,理学療法としては膝関節への着目だけでなく,TKA施行側への荷重や退院後の活動量増加,身体バランス向上へのアプローチによって大腿骨頚部骨折を予防する重要性が示唆された。
  • 吉岡 洸一郎, 石井 義則, 鈴木 沙也加, 小林 聖弥, 野口 英雄, 佐藤 潤香
    日本臨床整形外科学会雑誌
    2023年 48 巻 1 号 31-37
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/29
    ジャーナル 認証あり

    目的:日本人男性は女性よりも健康寿命が短く,平均寿命との差も大きい.本研究では,自立歩行可能な80歳以上の男性高齢者がどの程度の身体機能を有しているかを調査した.

    方法:対象は,2019年6月1日~2021年6月1日の2年間に当院を訪れ,「80歳以上の男性における運動器機能評価」に参加した自立歩行可能な男性120名とし,認知機能と7つの身体機能測定を行った.

    結果:測定結果は,全ての項目で同年代と比較し,同等または高値であった.自立した歩行能力を有することで,高い身体機能の維持が可能になることが示唆された.

    結論:得られた測定値は,80歳未満の男性や医療従事者に対して,自立歩行能を維持し健康な80歳を迎えるために必要な身体機能の目標値となりえる.

  • ―術後平均10年経過例における大腿四頭筋の等尺性筋力解析から―
    桜井 徹也, 佐藤 潤香, 野口 英雄, 石井 義則
    理学療法学Supplement
    2017年 2016 巻 O-MT-10-1
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/24
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに,目的】

    人工膝関節全置換術(以下TKA)後の大腿四頭筋筋力低下に関する報告の多くは術後短期間での成績であり,術後長期成績に関する報告は少ない。近年大腿四頭筋筋力(以下QS)は患者立脚型評価であるKnee Society Knee Scoring System(以下KSKSS)にて定義されている基本的活動ならびに応用的活動と高い相関関係があると報告されており,Furuらは(J Orthop Sci. 2016),QSはTKA術後患者の満足度や活動復帰においても重要であると報告している。本研究の目的は両側TKA術後平均10年経過例におけるQSをTKA症例と年齢を合わせた健常例と比較し,同時に同一症例間で左右異なるデザインのQSへの影響を検討することである。

    【方法】

    両側変形性膝関節症と診断され,一側をDepuy社製LCS Total Knee System後十字靭帯温存型(以下CR群)に置換し,もう一側を切離型(以下PS群)に置換した二期的両側TKA34例68膝を対象とした(平均年齢81歳,69-96歳)。手術はすべて同一術者によって施行され,CR群のフォローアップ期間は111カ月,PS群は114カ月であった。またTKA症例と年齢を合わせた膝への愁訴のない健常例35例70膝を対照群とした(平均年齢83歳,71-92歳)。大腿四頭筋筋力測定はアルケア社製ロコモスキャンにて,膝20°屈曲位での等尺性膝伸展筋力を測定した。各群3回ずつ測定し,最大値を代表値として,体重に対する筋力比(以下MS/BW;N/kg)を検討項目とした。医療側評価としてHospital for Special Surgery(以下HSS)スコア統計と患者立脚型評価であるKSKSSを実施した。

    【結果】

    MS/BWにおいて,CR群は3.3(1.4-10.5),PS群は3.4(0.9-9.3),対照群は4.6(0.4-8.8)であった。CR群とPS群との間に有意差を認めなかったが,健常群と比較しCR群・PS群ともに有意に低値を示した(CR群p=0.020,PS群p=0.024)。HSSはCR群95/100点,PS群95/100点であったが,KSKSSはCR群132/180点,PS群132/180点とそれぞれ低値を示した。

    【結論】

    本研究の結果より術後平均10年経過例において,臨床成績が良好にも関わらずCR群・PS群のいずれにおいても体重に対する筋力比が同年代の健常者と比較して有意に低値を示しており,大腿四頭筋の筋力低下が術後中長期においても残存していることが示唆された。また,CR群・PS群間で差を認めず,PCL温存は大腿四頭筋筋力の点において大きなメリットにならないことが示唆された。今回の結果から,医療側評価スコアが高値にも拘らず,患者自身の満足度が低く,残存する大腿四頭筋筋力低下もその一因であることが推察された。昨今の在院日数の短縮化や診療報酬改定によるリハビリテーション期間の短縮化が進められている中,TKA後の患者満足度や活動復帰にとって大腿四頭筋が重要であることを考慮し健常例と同レベルまでに改善させるためには,ホームエクササイズの提案など,大腿四頭筋筋力強化の長期間の継続が必要であることが示唆された。

  • 後十字靱帯温存および切離での比較検討
    坂下 大, 高橋 賢, 木賀 洋, 諸澄 孝宜, 石井 義則, 野口 英雄, 武田 光宏
    理学療法学Supplement
    2008年 2007 巻 917
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】人工膝関節全置換術(TKA)における術後可動域の報告は多い。当院でも第26回関東甲信越ブロック理学療法士学会において、術後評価を左右する周術期可動域を後十字靱帯(PCL)温存型と切離型で比較検討し報告した。今回、調査期間を術後12ヶ月時まで拡大し、PCL温存・切離による予後予測と術後可動域の留意点について考察した。対象:平成14年9月から平成18年9月までに、外傷歴のない変形性膝関節症により、当院にてTKAを施行した症例87例100関節(男性12関節、女性88関節、平均年齢72歳、平均在院日数40日) を対象とした。PCL温存、切離は無作為に選択し、温存型(50関節)、切離型(50関節)であった。手術は全例同一術者により施行され、機種はLCS Total Knee System(Depuy社)を使用した。術後理学療法は翌日より全荷重を許可し、10日目まで自動関節運動、以降は他動関節運動も実施した。

    【方法】各症例に本研究の同意を得た後、術前、術中、術後(1ヶ月、6ヶ月、12ヶ月)の膝関節可動域を測定し、PCL温存型・切離型の比較を行った。統計処理はrepeated measure ANOVA 、Scheffe's F test、Spearman’s correlation coefficient by rank testを用い、有意水準は5%とした。

    【結果】可動域の平均値は、PCL温存群で術前119.4±18.4°、術中120.5±6.6°、術後1ヶ月99.3±16.1°、6ヶ月110.9±15.2°、12ヶ月115.4±16.3°、PCL切離群112.3±18.5°、118.9±8.5°、94.5±17.0°、107.7±15.6°、113.9±14.5°であった。PCL温存・切離と測定期間との間に交互作用はなく(p=0.358)、平均可動域はPCL温存・切離による差は認めないが(p=0.11)、測定期間による差が認められ(p<0.001)、うち術前・1ヶ月、術中・1ヶ月、術中・6ヶ月、1ヶ月・6ヶ月、1ヶ月・12ヶ月の比較において有意差が認められた(p<0.01)。一方、術前との相関は、両群ともに術中、6ヶ月、12ヶ月で有意であり、1ヶ月(温存群:r=0.266、p=0.072/切離群:r=0.377、p=0.009)では切離群のみ有意であった。術中との相関は、両群ともに12ヶ月で有意であり、1ヶ月(r=0.125、p=0.945/r=0.489、p=0.002)、6ヶ月(r=0.339、p=0.081/r=0.402、p=0.016)では切離群のみ有意であった。

    【考察】前研究は、術後可動域に及ぼすPCLの影響を報告した。本結果より、PCL温存群の術後6ヶ月までの可動域は、PCLの影響のうち手術時の剥離操作による術後の一過性の拘縮・機能不全が強く影響することが推測され、術後12ヶ月では改善するものの、PCL温存型の後療法では術後早期からの可動域に対するアプローチが重要になると示唆された。また両群において、平均可動域は各時点での有意差はなく経過とともに改善し、術後12ヶ月には最も可動域の得られた術中と有意差を認めなくなることから、術後可動域は長期間にわたり改善することを考慮し、術中可動域を目標にフォローアップできることが示唆された。
  • CPK値を運動強度・量の指標とした一症例
    *諸澄 孝宜, 高橋 賢
    理学療法学Supplement
    2007年 2006 巻 945
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    封入体筋炎は多発性筋炎や皮膚筋炎と区分される原因不明の炎症性筋疾患で、その治療法は確立されていない。筋炎の増悪を避けるため積極的な運動は控えるのが原則であるが、至適運動強度や活動量の指標は明らかにされていない。本報告では、封入体筋炎患者の転倒予防に対し、CPK値と体組成を確認しながら運動療法の強度や量の調整を行ってきた経過から、これらが筋炎の状態を管理した運動の指標として用いられるか考察した。
    【症例】
    71歳、男性、BMI 23.2。平成15年4月、下り坂で激しく転倒し、その後段差で転倒・膝折れすることが多くなった。平成17年9月、他病院にて確定診断を受け、主治医の説明により積極的な運動は控えていたが、体力・筋力低下により日常生活に支障をきたすようになり、12月に本人のリハビリ希望で当院を受診した。
    【検査方法】
    本人の同意の上、運動前(以下pre)・運動直後(以下post(1))・翌日(以下post(2))に採血した。体組成は生体電気インピーダンス方式体組成計Physion XP(株式会社フィジオン製)で測定した。
    【プログラムの設定】
    初期では、筋組織への負担を考慮し(1)有酸素運動(2)下肢等尺性収縮運動(姿勢保持)とした。以後、3ヶ月毎にCPK値・体組成(骨量・筋量)を検査し、種目・運動負荷を調整した。また生活における活動量は問診と指導により調整した。
    【経過】
    運動に関係なくCPK値は高値であった。CPK値(IU/L)は平成18年1月pre826→post(1)905→post(2)832、2月pre519→post(1)580→post(2)532、5月pre460→post(1)506→post(2)402、8月pre295→post(1)352→post(2)368であった。筋量の体重比率は平成18年1月32.5%、2月31.1%、5月29.1%、8月27.1%で、経時的に減少が認められた。膝折れや転倒の頻度は減少傾向だが、疲労感のある時は出現しやすい。しかし、歩行速度・安定性は改善したと周囲に評価されることもあり、「筋力がついてきた気がする」という発言もあった。
    【考察】
    本疾患のリスク管理で最も重要なのは、筋炎悪化による筋萎縮の進行であるが、患者のQOLを考えると、リスク管理のための指標を用いた運動療法の実施も同様に重要である。本報告でのCPK値と体組成を指標とした運動療法の経過においては、筋量の減少は認められたものの、歩行能力の主観的な改善傾向と趣味や社会活動の継続によるQOLの維持は獲得されている。しかし、生活全体の精確な活動量の評価や管理は困難であったため、病態の進行と運動療法自体の影響までには言及できなかった。今後も主治医と相談しながら、可能な限りQOLを維持できるようなリハビリと生活での活動量の管理を行い、適切な運動の指標を見出せるよう関わっていく。
  • 内外側の大腿骨後顆の厚さの影響と術後理学療法について
    諸澄 孝宜, 石井 義則, 野口 英雄, 武田 光宏, 佐藤 潤香, 桜井 徹也, 鳥谷部 真一
    理学療法学Supplement
    2011年 2010 巻 OF2-052
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    人工関節全置換術(TKA)術後の膝関節可動域(ROM)について,Bellemansら(2002)は大腿骨後顆の厚さ(Posterior Condylar Offset;PCO)がCR型TKA術後の屈曲ROMと相関関係を示すと報告したが,その後の追試により意見の分かれるところである.また,石井(2010)はX線画像におけるPCOの変化は内外側顆のいずれの変化も反映しないことを報告した.そこで,本研究ではTKA術後,内外側PCOと屈曲ROMの変化の関係を検討し,インプラントの特性を考慮した術後理学療法について考察した.
    【方法】
    平成15年4月から平成22年7月までの評価期間の中で,当院にて術前に変形性膝関節症と診断されてTKAを施行し,術後12カ月以上の経過観察が可能であった症例98名106膝関節(手術時平均年齢72歳(53-83歳),男性18名,女性80名)を対象とした.手術は全例Depuy社のMobile-Bearing型LCS人工膝関節システムを使用し,術後は当院のプロトコールに従って翌日より全荷重を許可し,術後1週は自動関節可動域運動(以下ROM-ex),抜拘後から麻酔下術中可動域を目標に他動 ROM-exを行った.術後早期からROM-exと並行して,腫脹や膝蓋骨可動性,術創部・膝軟部組織の柔軟性に対して積極的なアプローチを行った.評価は術前後に屈曲ROMを計測し,3次元下肢アライメント解析システム(Knee-CAS,佐藤ら,2004)を用いて内外側PCOをそれぞれ計測した.結果より,各PCOの変化量と術後屈曲可動域についてはスピアマンの順位相関係数を用いた.また,内外側PCOの変化パターンに応じて4群に群分けし,各群と術後屈曲可動域の増加率についてはχ2検定,術後屈曲可動域の増加量についてはクラスカルワーリス検定を用いた.統計分析にはSPSS17.0を使用して統計的有意水準は5%とした.
    【説明と同意】
    本研究は当院の倫理審査委員会の承認を得て,全ての対象者から同意を得た.
    【結果】
    膝関節屈曲ROMは術前118±17.0°,術中115±8°,術後112±15°で,術前後差は-6±16°であった.内側PCOは術前26.4±2.7mm,術後26.2±3.9mmで,術前後差は-0.2±3.6mm(増大54例,減少52例)であった.外側PCOは術前25.1±2.4mm,術後28.5±3.8mmで術前後差は3.4±3.8mm(増大89例,減少17例)であった.内側・外側PCOの変化量と術後屈曲角度に相関は認められなかった(内側PCO変化vs.術後屈曲角度; R=-0.038,外側PCO vs.術後屈曲角度;R=-0.090).また,4群間でPCO変化パターンと術後屈曲角度変化率(p=0.443),術後屈曲角度変化量(p=0.593)では,ともに有意差は認められなかった.
    【考察】
    TKA術後ROMに影響する因子として,術前ROMや術後疼痛,手術関連因子(後十字靭帯切離の有無)などが報告されている.しかし,人工関節の運動規定因子であるインプラントの形状やデザイン,軟部組織などが考慮された術後理学療法の報告は少ない.BellemansらはTKA術後の大腿骨後方インピンジメントを予防し屈曲ROMを増大するためにPCOの再獲得が必要であると述べている.しかし,本研究ではPCOの術前後変化は内外側ともに術後膝関節屈曲ROMに影響を及ぼさなかった.これは術後理学療法において腫脹や疼痛に配慮しながら,筋や靭帯などの軟部組織に対して早期から十分なアプローチしたことでLCS 人工関節システムの特性(mobile bearing機構)が活かされたと考えられる.つまり,LCS人工関節システムにおいて,インプラントのデザインコンセプトを考慮した上で,その阻害因子になり得る軟部組織柔軟性に対して十分な術後理学療法が展開されるならば,屈曲ROMに関してPCOの変化を考慮する必要はないことが示唆された.
    【理学療法学研究としての意義】
    本研究ではLCS人工関節システムにおけるインプラントの形状(PCO)について検討したが,デザインの阻害因子に対して十分にアプローチされる必要性があり,術後理学療法の重要性が再確認された.また,インプラントや術式まで考慮された術後理学療法が展開されるべきであるという知見は,今後の理学療法研究にとって有意義であると考える.
  • 第1報
    *江玉 睦明, 飯田 晋, 渡辺 博史, 濱辺 政晴, 古賀 良生, 佐藤 卓
    理学療法学Supplement
    2007年 2006 巻 286
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】人工膝関節全置換術(以下,TKA)のリハビリテーションは術後早期より開始される。関節可動域(以下,ROM)についても早期の獲得が重視されている。今回,TKA後早期の膝屈曲ROMと屈曲改善角度を経時的にとらえ検討したので報告する。
    【対象】平成16年11月から平成18年7月までに当院にてTKAを施行した患者(13名17膝,男性4名,女性9名,全例変形性膝関節症,平均年齢73±4歳)を対象とした。機種は全例 ADVANCE Medial Pivot Knee(Wright Medical Technology社製)を使用した。
    【方法】術後3日及び1週から6週までの他動・自動膝屈曲ROMを測定し,各週での屈曲改善角度を求めた。そこで術後6週での他動膝屈曲ROMが120°以上(以下,良好群)9名(平均年齢:74±4歳,10膝)と120度未満(以下,不良群)4名(平均年齢:72±3.5歳,7膝)の2群に分け,3日~2週まで(以下,I期)と2週~6週まで(以下,II期)の屈曲改善角度について検討した。
    統計学的検討には,各項目での経時的変化では反復測定分散分析,多重比較法(Tukey-Kramer法),2群間では対応のないt検定を用い,有意水準を5%未満とした。
    【結果】全体での膝屈曲ROMは,他動・自動ともに2週まで有意な改善を認め,屈曲改善角度は,他動・自動ともに3週以降に比して2週まで有意に高値を示した。良好群は不良群に比して,術前他動膝屈曲ROM(良好群:138±10.2°,不良群:128±13°),術前自動膝屈曲ROM(良好群:131±12°,不良群:120±13.7°),I期他動屈曲改善角度(良好群:48.2±22°,不良群:27.7±15.1°),I期自動屈曲改善角度(良好群:47.9±22.9°,不良群:24.2±18.9°),2週以降での他動・自動膝屈曲ROMは,有意に高値を示した。II期の他動屈曲改善角度(良好群:10.8±8.9°,不良群:16.3±8.8°),II期の自動屈曲改善角度(良好群:10.3±6.1°/不良群:14.2±4.2°)は有意差を認めなかった。
    【考察】TKA後の膝屈曲ROMは,一般的に手術前の膝屈曲ROMに最も影響されるとされている。今回,良好群は不良群に比して,術前の膝屈曲ROMに加えて術後3日~2週までの他動・自動屈曲改善角度も有意に高値を示しており,術後早期のROMの獲得が重要であることが示唆された。術後早期は炎症症状が強い時期であるため,いかに炎症症状を管理しながらROMを獲得していくかが重要であると考えられた。術後良好な膝屈曲ROMの獲得には術前のROMの向上とともに、術後2週までの早期にROMの獲得が重要であると考えられた。

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