平成30年3月に高校の新しい学習指導要領が告示され,統計教育の充実が図られた.高校の数学Ⅰでは「仮説検定の考え方」が新規に加わり,その指導の内容や方法の検討は喫緊の課題である.そこで,本研究では,
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を活用した「仮説検定の考え方」の指導の可能性を考察した.その結果,
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を活用することで,(1) 繰り返し実験を行うことができ「不確実な事象の起こりやすさ」を体験的に理解できること,(2) 計算時間を多くとらなくとも既習事項(相対度数や標準偏差等)を活用して考察できること,(3) 実験を計画し,入力作成,実施し,判断する学習活動を通して,批判的に考察できることなどが示唆された.また,(4)
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の利用は中学校,高校の数学の教科書でも取り上げられているが,実際には指導されていない場合が多く,
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の関数については必要に応じて指導する必要があること,(5)「稀にしか起こらないこと」の判断基準を明確にする必要性を指導する必要があることなどが示唆された.今後は,授業で使える具体的な教材例を開発することと,それらを活用した授業を実際に行い,その効果を検証することが課題である.
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