一般に実用に供されている各種調味液による軟鋼の腐食速度を測定した結果, 腐食速度は浸漬初期に大きく次第に一定値に近づき, その期間は7~10日であった. また調味液は, その鉄鋼に対する腐食性より, 三種類に分類できることがわかった.すなわち,
1) 腐食性の大きなものは, 食酢, 食塩水で特に食酢は最大であった.
2) 腐食性の非常に小さなものは重曹水, 糖液であった.
3) 腐食の抑制作用のあるものは, 味噌, 醤油であった. また二種以上の混合溶液では, 二杯酢, 三杯酢, 酢味噌液等が酢単独のものに比べて非常に顕著な腐食性の低下をみた. この原因については本実験の範囲では明らかではないが, おそらくこれらに含まれるアミノ酸, および蛋白粒子の効果, 脂肪による油性皮膜の生成などによることが考えられる.
腐食後の試料片観察によっても腐食状態の相異がわかり, 腐食性の強い食塩水, 食酢液では孔食や粒界腐食がみられ, 測定値とよく一致したので, この結果からも腐食性の大小が推定できる.
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