本論文では,人口減少及び人口構成の高齢化へのシフトが保護観察を中心とする更生保護制度に与える影響について検討した.人口減少は保護観察を受ける者の減少を引き起こし,人口構成の高齢化は,保護観察を受ける者の高齢化を生起させる可能性が高い.それに伴い,保護観察の処遇も少年を対象としたものから成人を対象としたものとならざるを得ないが,処遇内容や体制の見直しは今後の課題である.保護観察を受ける者と保護観察官及び保護司が1対1で対応するという現在の処遇態勢の見直しも必要となる.処遇する側が複数でチームを組んで,多面的な処遇を実施するチーム処遇や複数担当官制などの処遇態勢も検討すべきであろう.人口減少と人口構成の高齢化は,保護司の適任者の確保という面に対しても影響を与えることが予想される.社会内処遇においては地域社会の協力が不可欠であり,その象徴である保護司制度の充実は,更生保護が今後も持続可能であるための条件である.更生保護が持続可能であるためには,レディーメイドの処遇ではなく,オーダーメイドの処遇を提供できるような組織態勢をつくることができるかどうかが課題となる.
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