1.はじめに 報告者はこれまでに日本地理学会の「地域連携活動研究グループ」等で大学と地方自治体が連携しての地域振興活動の試行などについて報告してきた。その成果の一部は山田浩久編著(2019)『地域連携活動の実践-大学から発信する地方創生』海青社にまとめている。同様の試みはその後も地域を変えながら継続的に行っている。本報告は、報告者が2021年度に行った福島県三春町との連携活動を報告するものである。
2.活動の概要 今回の活動は、三春町からの依頼を基に構想したものである。当初は三春町にある福島県立田村高校が行う地域探究活動と連携し、高校生の活動を大学生がサポートしながら地域振興のためのアイデアを出し、その実践を試行することを目的としていた。しかし、Covid-19の流行に伴い高校側が生徒の地域探究活動を中止したため、大学生のみによる活動となり、内容も「大学生による地域振興のための構想」の作成とした。 活動は福島大学人間発達文化学類の授業「地理学実地研究」と連携して行い、学生(1年生)24名が参加した。当初の予定においては9月以降に高校生が行う探究活動に参加する予定だったため、前期においては、三春町の地誌の学習を通して地理学に関する基礎的な知識と技能を身につけることを授業の目的とした。具体的には、25000分の1地形図を用いて等高線や土地利用の読み取りなどを行い、地域の特徴を把握した上で三春町に関する文献を講読し、これまでに行われた事業や施設整備などを把握した。さらに三春町の巡検を行うと共に、町の第二期「人口ビジョン」と「総合戦略」から、三春町が直面している課題と、町が構想している今後の方向性について検討を加えた。 このような準備の上に高校生との共同作業に入る予定だったが、Covid-19の流行拡大によって高校側が高校生の地域活動を中止することになった。そのため、後期の授業においては大学生だけで地域振興のための構想を作成し、それを三春町に提出する、と言う内容に変更した。 学生は6名ずつ4班に分かれ、「総合戦略」の中に示された町の振興方向を具体化するための案の作成に携わった。後期の授業は、構想を作成するためのグループ活動を中心とし、地域調査と中間・最終発表会を経た上で報告書を作成した。 以下、各班の構想の概要を示す。
3.学生の作成した振興構想 ①まちなかスタンプラリーの実施 この班は中心商店街の活性化を目的として、商店を巡るスタンプラリーを企画した。回った店数に応じて割引券と交換できるシステムにする。ただし、その割引券は当日用ではなく、秋祭りの際に使えるものとする。これは三春町の観光名所として「滝桜」があり、観光客が春に集中するためである。秋祭りに使える割引券を創ることで、オフシーズンの入込客の増加を図る。 ②
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級グルメ
を用いたふるさと学習 この班は三春町の
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級グルメ
である「グルメンチ」を用いたふるさと学習を企画した。グルメンチとは、三春町特産のピーマンを混ぜたメンチカツである。小学校の総合的な学習の時間を想定して、ピーマンの栽培・収穫とグルメンチ作成まで行うことを想定している。これらの活動を介して郷土愛の育成を図る。 ③SNSを活用した地域情報発信 三春町の広報においてはSNSが十分に活用されていない。そこで首都圏の大学生に体験観光に来てもらい、その情報をSNSで発信してもらう。その注目度等に関してコンクールを行い、そのトップになった人は、再度三春町に招待する。 ④まちなか桜観光の拡大 この版も①班と同様、中心商店街の活性化を目指している。ただし、多くの観光客を集める「滝桜」を活用し、まちなかの桜名所をPRすることによって、滝桜に来た観光客をまちなかに誘導することを目指している。これにあたり、レンタサイクルの活用なども提言した。 以上、2021年度の活動について報告した。22年度こそ高校との連携活動を行いたい。
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