加熱時の卵殻の有無が卵黄の性状におよぼす影響について, カードメーターによる破断強度の測定, 卵黄係数の測定, および組織の観察から検討を行い, 次の結果を得た.
1) 卵殻のままで, 40, 50, 60, 70, 80℃加熱を行った場合, 40~60℃加熱卵黄は生卵黄と同様流動状, 70℃加熱卵黄は粘稠状のゲル, 80℃加熱卵黄は粉質状であった.破断強度は, 70℃, 80℃となるに従って大きくなり, 卵黄係数は, 流動性の有無による差をはっきりと示した.また, 40, 50, 70, 80℃加熱卵黄の組織は, 生卵黄と同様, 多面形顆粒構造であった.
2) 60℃加熱卵黄の場合, 破断強度や卵黄係数の低下が認められた.この卵黄は衝撃に弱く, 卵黄膜が除かれていなくても組織構造はこわされ, 球形の卵黄球が散らぼった状態であった.これは古い生卵黄と類似した状態であった.
3) 新鮮卵, 古い卵, 60℃前加熱卵の3種で, ゆで卵と目玉焼を作った.ゆで卵の卵黄は3種ともに, 破断強度はほとんど同じであり, 組織は多面形顆粒構造であった.目玉焼の卵黄では, 古い卵で作られた場合, 破断強度が大きいこと, 多面形顆粒構造がこわされていることを認めた.
4) 古い卵では, 「卵殻外に卵黄を取り出す」ことにより卵黄の組織が変化しやすく, 加熱後の卵黄の性状に影響をおよぼした.
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