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システムは, 幾何学的な確率とベイズ統計, および正規確率密度関数を用いて, 空間と頻度の情報を統合し, 対象中心のモデル出現確率分布図を作成する.対象中心のモデルには, 例えば, 特定の型 (モデル) の鉱床があり, 又は、鉱床に伴う変質帯や, そのほか, 平面図状に正規の形として表現できるどんなものでもよい.モデルは, 制御領域における規模, 形, 平均値, 標準偏差値によって表現され, 研究対象地域にその結果が適用される.串木野鉱床は石英, 石灰石, カリ長石を伴う鉱脈群からなり, 1660年以来これまでに金を55トン, 銀を456トン産出してきた.串木野鉱床近傍の南北に6km東西に10kmの部分領域が, モデルの制御領域として使われた.この制御領域の中で, データ図化, 等高線図, クラスタ解析によって, 母集団を鉱床不毛帯と, 鉱床帯に分類した.ナトリウムは, 長軸3.1km短軸1.6kmの楕円形領域の溶脱帯を形成していた.カリは3kmと1.3kmの楕円形領域の中で, あるいは溶脱しあるいは逆に富化し, いずれにしても組成が変化していた.硫黄は5.8kmと1.6kmの楕円形領域の中で富化していた.ナトリウム, カリ, 硫黄の分析データがある地表岩石試料233個を用いて, 串木野鉱床を含む12km対30kmの対象領域から
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システムにより鉱床分布高確率領域を推定した.ナトリウム, カリ, 硫黄のそれぞれにおける高確率領域は, 串木野主鉱脈の東方4km付近に相互に重なるか, ずれて分布していた.一般的に,
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システムが指摘する高確率領域は, 主鉱脈からずれ, 串木野鉱脈とほぼ同じ時期の安山岩と石英安山岩―安山岩にかかるだけでなく, 串木野の東と北西に当たるより新しい堆積岩や安山岩, 凝灰岩層にもかかっている.鉱床賦存高確率領域は, 串木野鉱脈近傍に同じパターンで見られるし, 1.5km東の古い金鉱化帯である羽島地域や, 串木野鉱脈より18km西にある古い金鉱化帯の八重山地域から西へ2kmの所に中心を持つ東西2.5km南北1kmに広がった地域にも同じ様な高確率のパターンが見られた.
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