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(医薬品規制調和国際会議 (旧「日米EU医薬品規制調和国際会議」) ではその活動が始まってから25年の月日が経ち, これまでに日米欧の規制当局と業界団体が協力して, 80以上のガイドラインを公表してきた. 主な成果物としては, 「医薬品の臨床試験の実施の基準」 (E6ガイドライン), 「コモン・テクニカル・ドキュメント」 (M4ガイドライン ; CTD) があり, 医薬品の開発および承認申請手順の国際調和に大きく貢献してきた. そのような状況のなか, 世界規模での医薬品開発を行ううえで, 紙をベースにした運用は, コスト, 効率性, スピードの観点で課題であり, 治験関連資料および薬事文書を電子化して対応する試みは近年
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の重要な活動のひとつとなってきた. 医薬品開発のライフサイクル (開発から承認後の維持管理まで) の種々の重要な場面での電子化が議論されているが, 当局への文書の提出方法の変更 (ゲートウェイ) や申請資料CTDの電子化 (eCTD) は, 紙ベースでの提出および審査の進め方を大きく変えた. 特にeCTDだけでなく申請電子データ (非臨床試験や臨床試験で得られたデータ) を
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側が提出することにより, 規制当局側は独自の解析を行うことが可能になっていくであろう. これにより審査プロセスの効率化 (照会事項の削減) に加え, 患者様のために,
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と規制当局がそれぞれ独立してデータを解析することによる医薬品評価の高度化が期待される. 2015年10月の
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協会設立に伴い,
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活動の対象は日米欧だけでなく世界全体となり, 市販後や後発品も対象となった. 今後, それぞれの国の医薬品情報を, 日米欧を含む世界の各国に電子文書として提出することが可能になれば, 世界の患者様へ貢献できるようになることが期待される. そのためには, 医薬品情報の取り扱いに関する国際規定を詳細に決めていく必要がある. その推進基盤として
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活動における電子化トピックスは一層重要性が増すであろう. また, 日本製薬工業協会 (JPMA) は今後も
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創始団体の一角として, 電子化トピックスをはじめとした最先端の
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規制を速やかに国内に取り入れていくこととともに特にアジア地域への普及に取り組むことを予定している.
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