高齢脳神経疾患患者では, 習慣性
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脱臼を併発することがある。
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脱臼の再発予防として, 従来は, チンキャップ, 包帯法, 観血的療法が行われてきたが, 我々はパーキンソン病患者の習慣性
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脱臼症例に対して, 抗パーキンソン薬の調節が有効であった症例を経験したので報告する。
症例は71歳の女性。主訴は義歯の不適合と
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習慣性脱臼で, 主な基礎疾患はパーキンソン病であった。当初徒手的整復を行い, 再発予防として包帯法を行ったが、その後も
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の脱臼を繰り返した。当センター神経内科に入院し, 抗パーキンソン薬の調節を行ったところ, 姿勢の保持改善とともに,
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脱臼はみられなくなった。しかし, 退院後, 自宅での食事や服薬が不規則になり, 流誕等の症状の発現とともに, 再度
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脱臼を繰り返すようになった。そこで, 神経内科における抗パーキンソン薬の再調節や家庭における食事および服薬時間の厳守に努めたところ,
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の脱臼はみられなくなった。
本症例では, パーキンソン病による錐体外路症状の変化と
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脱臼の発現が連動していたことから,
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脱臼にはパーキンソン病による咀嚼筋の機能障害が関与しているものと考えられた。また, 習慣性
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脱臼の再発予防には, 抗パーキンソン薬の調節による錐体外路症状のコントロールが有効であった。
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