日本食品科学工学会誌
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「べにふうき」緑茶による脂肪蓄積抑制の作用機序
織谷 幸太松井 悠子栗田 郁子木下 洋輔川上 晋平柳江 高次西村 栄作加藤 正俊齋 政彦松本 一朗阿部 啓子山本(前田) 万里亀井 優徳
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2009 年 56 巻 7 号 p. 412-418

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抄録

「べにふうき」はエピガロカテキン-3-O-(3-O-メチル)ガレート(EGCG3″Me)等のメチル化カテキンを含有する独特な茶品種である.本報告では,「べにふうき」の強い抗肥満効果の作用機作について,メチル化カテキンを含まない茶品種「やぶきた」を比較対照として検討した.
[方法] 12週齢のC57BL/6J♂マウスを高脂肪飼料のみ,2%「べにふうき」茶葉を含有する高脂肪飼料,および,2%「やぶきた」茶葉を含有する飼料により5週間飼育し,腎周囲脂肪組織中の遺伝子発現量をDNAマイクロアレイ法により網羅的に測定,比較した.また,3T3-L1細胞株を用いて,EGCG, EGCG3″Meおよびカフェインが細胞内脂肪蓄積および前駆細胞から成熟脂肪細胞への分化に及ぼす阻害効果を比較した.更に,一夜絶食させたラットに「べにふうき」の熱水抽出液を経口投与したあと,血漿中におけるEGCGおよびEGCG3″Meの経時的な濃度変化を比較した.
「結果および結論」DNAマイクロアレイの結果より,「べにふうき」の抗肥満効果は,脂肪細胞中における脂肪酸の合成およびβ酸化に関連する酵素群の遺伝子発現レベルを低下させることにより,細胞内への脂肪蓄積を阻害した結果であると考えられた.「べにふうき」が「やぶきた」よりも強い抗肥満効果を有する主な原因は,「べにふうき」に含まれるメチル化カテキン(主としてEGCG3″Me)にあると考えられた.EGCG3″Meの脂肪蓄積阻害効果はEGCGとほぼ同等であり(3T3-L1細胞の分化抑制効果として約91%),血中における滞留性はEGCGの3.2倍高いため,「べにふうき」中に含まれるEGCG3″Me量はEGCG量に比べて非常に少ないにもかかわらず,EGCGとEGCG3″Meを合算した脂肪蓄積抑制効果はEGCG単独の効果に比べて1.7倍高くなり,EGCG3″Meが含まれることによって「べにふうき」の抗肥満作用は増強されている.

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© 2009 日本食品科学工学会
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