2021 年 13 巻 1 号 p. 78-81
症例の概要:患者は67歳女性,上下無歯顎で,下顎義歯の維持不良を主訴に来院した.下顎全部床義歯の機能時維持不良による咀嚼障害と診断し,新義歯を製作する上で,機能時に十分な辺縁封鎖が得られるような適切な床形態を付与することで咀嚼障害の改善を図った.
考察:下顎前歯部は,顎堤が著しく吸収し,菲薄な軟膜で覆われている状態で,旧下顎義歯の前歯部舌側床縁の最深部がオトガイ棘の手前であった.新義歯ではオトガイ棘を完全に被覆したことで,機能時にも確実な辺縁封鎖が得られ,維持の改善が認められたと考えられる.
結論:下顎全部床義歯の床辺縁の位置ならびに形態は,義歯の維持を確実に行ううえで非常に大切な要素の一つであると言える.