2022 年 14 巻 2 号 p. 197-200
症例の概要:79歳女性.下顎全部床義歯の不備による咀嚼障害を主訴に来院した.上顎は両側遊離端の部分床義歯が装着されており,パノラマX線写真にて右側下顎頭の欠損を認めた.下顎は無歯顎で顎堤の吸収が著しく,上下顎顎堤の対向関係に不調和を呈していた.
考察:右側下顎頭欠損に起因する下顎の右側偏位が下顎全部床義歯に維持の低下をもたらしていると判断し,治療用義歯製作時にピエゾグラフィを行った.筋圧中立帯内に人工歯排列と義歯床研磨面形態を設定することにより下顎全部床義歯の維持が向上したと考えられる.
結論:人工歯排列位置および研磨面形態に留意して義歯作製を行うことが,義歯の維持安定に有効であった.