日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成20年度日本調理科学会大会
セッションID: 1P-34
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ポスタ-セッション
調理操作を変えて調製した昆布佃煮ならびに市販昆布食品中の総ヒ素量の定量
*佐藤 久美笠井 慶子村上 和雄長尾 慶子
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抄録

【目的】
 海藻類で特に需要の高い昆布に着目し,これまでアミノ酸ならびにヒ素の溶出量に焦点をあて,栄養・安全の両面からだし汁ならびに昆布煮物としての最適な調製法を検討してきた。今回は煮物調理として代表的な佃煮を調理操作を変えて調製し,総ヒ素量(以下ヒ素と略記)の低減化について検討した。また市販の昆布加工品類は,その製造工程が伝統的手法で作られている家庭調理品と異なることが多いため,市販加工品中のヒ素量を定量し,手製佃煮との比較を行った。
【方法】
 手製佃煮には北海道小安産マコンブを用いた。3cm角に切った昆布10gは試料間のばらつきがないように秤量し,酢(0%,10%,50%)を加えた水100g中で2時間浸漬した。次にガス弱火(火力2)で10分間加熱後極弱火(火力1)にし,醤油・砂糖を加えて計40分間加熱した。また調理操作の異なる(1.浸漬前に焙る,2.細切り,3.浸漬水を除去)試料も調製した。その他市販加工品として,佃煮の他に惣菜および菓子類も測定対象とした。上記試料を120℃のガスオーブンで30分間加熱乾燥後粉砕し,マッフル炉で450℃ 120分灰化させてから水素化物発生原子吸光分光法を用いてヒ素量を測定した。
【結果】
 手製佃煮のヒ素量は,調理操作によって異なり7~24μg/g程度であった。浸漬水中の食酢量を増加させても佃煮中のヒ素量はあまり変化しなかった。昆布を細切りにし,さらに浸漬水を除去して調製するとヒ素量が大幅に減少し,原料昆布の70%のヒ素を除去することができた。また市販加工品は0.1~17μg/g程度のヒ素が含まれており,使用された昆布の種類や部位,使用量,加工法によって大きく異なることが推察された。
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© 2008日本調理科学会
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