抄録
【目的】 我々の研究室では、和菓子の材料として利用されているクズでんぷんについて、新葛と数年間貯蔵されたものの調理科学的特性を比較検討し、報告した1)。ところで、でんぷんは湿熱処理することで、その特性が大きく変化することが知られている。そこで本研究では、クズでんぷんを湿熱処理し、その変化のメカニズムを検討し、貯蔵でんぷんの調理科学的特性との関連性を明らかにしようとした。
【方法】 試料は、先の実験で用いた平成19年産の吉野葛((株)八十吉)を、120℃で湿熱処理したものである。色差、水分含量の他、でんぷんゾルの物性(硬さ、付着性)を、厚生労働省「高齢者用食品の表示許可の取扱いについて」の測定法に準じて、経時的に測定した。糊化特性は、RVAを用いて測定した。さらに、X線回折、電子顕微鏡によるでんぷん粒の観察、粒度分布を比較した。
【結果・考察】 各でんぷんゾルの硬さ・付着性は、調製直後には差が認められなかったが、湿熱処理でんぷんは未処理のでんぷんより急激に硬くなり付着性も大きくなった。糊化特性では、湿熱処理でんぷんの方が糊化開始温度は高く、最高粘度が著しく低かった。また、X線回折図形は、湿熱処理によってC図形からA図形に変化した。でんぷん粒の顕微鏡観察、粒度分布測定の結果より、湿熱処理によってでんぷん粒の不均一化が顕著になることが示唆された。貯蔵でんぷんの特性は湿熱処理されたものと一部類似しており、湿熱処理でんぷんと同様の結晶構造の変化が示唆され、現在さらに検討中である。
参考:1)村元由佳利、松井元子ら:葛澱粉の貯蔵による調理科学的特性の変化、日本家政学会関西支部第30回研究発表会講演要旨集、p.15、2008