抄録
【目的】2005年度より栄養教諭制度が開始され学校での食育が盛んに行われている。中でも食の安全性や国の食糧自給率低下の問題を踏まえて、地産地消や郷土料理が注目されつつある。また、女性の社会進出や食の平準化が促進する現在、家庭での郷土料理伝承は困難な状況にあることが予想される。そこで、小学校における郷土料理伝承に着目し、学校給食での郷土料理提供状況および食文化伝承の方向性を検討することを目的とした。
【方法】全国学校総覧に記載されている小学校から無作為に1,100校を抽出し調査対象とした。調査時期は2007年8月から9月であり、質問紙を各学校栄養職員宛に郵送し、無記名の自記式アンケート調査を行った。調査項目は、学校給食における郷土料理提供の有無とその理由、提供した郷土料理に関する質問、学校栄養職員に関する質問とした。統計学的な解析にはSPSS Ver.16.0およびエクセル統計2006を用いた。
【結果】回答の回収率は47.9%(527校)であった。そのうち、回答に不備があったものを除外し、460校の回答を分析に用いた。学校給食で郷土料理を提供している学校は87.4%であった。郷土料理を提供する理由は、「郷土料理を知らせたい」が32.7%と最も高く、次いで「地域の食文化を伝承したい」が30.4%であった。一方、郷土料理を提供しない理由は、「郷土料理がない」が24.0%、「給食の献立にふさわしくない」が16.0%、「手間がかかる」が14.0%であった。学校給食に関する業務の中で特に重要なことは何かという問に対する回答では、「郷土料理の取り入れ」は10.7%と低かった。現在、学校給食で伝承されている郷土料理には、作りやすさという要因が影響していることが伺えた。