抄録
【目的】 超高齢社会へと移行している日本では、身体機能の低下した高齢者による誤嚥の問題が深刻となっている。嚥下は咀嚼後の食塊の物性と深い関係にあるため、咽頭部での食塊の移動特性と食塊の物性との関連性を研究することは、嚥下について考える上で重要である。これまで、寒天ゲルとゼラチンゲルについて咀嚼回数、摂取量と咽頭部での食塊の移動特性について検討してきた。食塊の移動速度は、寒天ゲルでは摂取量が多く、咀嚼回数の少ない硬いゲルで高く、ゼラチンゲルでは摂取量が少なく、咀嚼回数の多いゾル状のものが高い値を示した。このように試料の状態は異なっていても、食塊の移動速度は両ゲルともに上昇したが、飲み込む時の頬や喉の筋肉の力の入れ方には差が見られると考えられる。咀嚼・嚥下時の一連の筋肉の運動強度を解析することにより、筋活動量、咀嚼後の試料の状態および飲み込みやすさとの関係性について検討した。
【方法】 筋電位計を用いて、咀嚼・嚥下時の咀嚼筋・嚥下筋の動きを測定した。筋肉の筋活動量は区間面積として解析した。試料は、1.0%寒天ゲル、3.0%ゼラチンゲルを用い、摂取量を各々3、6、9、12gとした。咀嚼条件は、自由咀嚼、5回、10回、30回、50回咀嚼とした。自由咀嚼では、各摂取量の試料嚥下直前までに、何回咀嚼を行ったかを計測した。
【結果】 同一咀嚼回数において、摂取量ごとに見ると、摂取量が大きくなるにつれて、咀嚼筋の区間面積は大きくなった。同一摂取量において、咀嚼回数ごとに見ると、咀嚼回数が増加するにつれて、咀嚼筋の区間面積は小さくなった。自由咀嚼の場合、嚥下までに要した咀嚼回数において、摂取量が増加するにつれて、咀嚼回数も増加した。