抄録
【目的】前報において、分離大豆たん白質(以下、SPI)を用いたクッキーの大豆由来の特有な不快臭(以下、大豆臭)を軽減する調製方法を水分量、調製手順、焼成温度・時間等の原因になると思わる項目で検討したところ、砂糖が大豆臭軽減に大きく影響すると考えられた。そこで本研究では、Schefféの単純格子計画法を用いて、SPI、小麦粉、砂糖の3成分を変化させて10格子点を求めた。物性値と官能評価の結果から得られた各特性値と材料配合比との関係について検討し、大豆臭の少ないクッキーの最適材料配合比を求めた。
【方法】材料はSPI(㈱フジプロテインテクノロジー)、小麦粉(薄力粉:日清製粉㈱)、上白糖(三井製糖㈱)、ショートニング(日本製粉㈱)、卵水(卵:蒸留水=1:1)を使用した。ドウはスピードカッターのプッシング機能を使用して調製した。焼成温度は160℃で15分間とした。材料配合比はシェッフェの単純格子計画法を用い、SPI、小麦粉、砂糖の3成分の最小値と最大値を求め、各格子点の水準に従って10格子点の配合を決めた。厚さ、破断特性(㈲タケトモ電機)および官能評価で得られた各特性値と材料配合比との関係を求めた。さらにガスクロマトグラフィーを用いて揮発性成分分析を行った。
【結果】Schefféの単純格子計画法から、SPIクッキーは小麦粉の配合比が多くなると硬さは小となり、大豆臭が薄まる効果があった。また糖の配合比が多いとカラメル化などで硬くもろい物性を示した。揮発性成分の測定から、格子点③ではアミノカルボニル反応と推察される成分が検出され、大豆臭が軽減したと考えられた。つり合い不完備計画法に従って官能評価を行ったところ、格子点③が嗜好の総合評価の項目で最も好まれた。