抄録
【目的】分岐鎖アミノ酸を多く含む乳清を食事から摂取することによりその生理的機能が期待できるよう調理法について検討を行ってきた。たんぱく性食品(赤魚)に乳清を利用すると食感は硬くなるが“うま味”が増すことや,乳清に調製した塩麹(酒精なし)を混合することにより“もろさ”を与えることが明らかとなっている。そこで,市販されている塩麹(酒精なし・あり)においても同様に味や食感の変化が期待できるか実験を行った。
【方法】乳清は「乳和食」に記載されている方法に従って調製した。塩麹は,市販の酒精なしのもの(㈲高善商店 塩分3%)と酒精入りのもの(マルコメ㈱ 塩分1.3%)の塩分を3%に統一し,乳清と塩麹の割合を1:1の混合液として使用した。冷凍の赤魚は,冷蔵庫内で緩慢解凍後1切れ20gに切りそろえ,混合液に2時間漬込んだ。試料はオーブンで180℃12分の加熱後,食味試験と検鏡試験を行った。検鏡試験は,試料をドライアイスで冷やしたアセトンで急速凍結後にコールド・ミクロトームで厚さ16μmの切片を作成し,PAS染色(糖質の染色)を行った。
【結果】食味試験では,これまでと同様に“うま味”や“甘味”を感じ,食感では“もろさ”が加わり噛み切りやすくなった。さらに、塩分統一を行ったにもかかわらず,酒精なしの方が塩味を強く感じた。検鏡(PAS染色)では,酒精なしの方が筋組織内部まで麹菌が侵入していた。