抄録
【目的】ごまは擦ることでごま特有の香りがたつが、市販の擦りごまは流通過程でその香りの質が変化してしまうのが課題であった。本研究では、ごま特有の香りを引き出す製法と嗜好との関連性を明らかにすることを目的に、検証を行った。
【方法】市販の白擦りごまを対照に、市販の白煎りごまをスチームコンベクションオーブン150℃で15分加熱したもの(以下ドライ)、同オーブンで150℃、相対湿度80%で15分加熱したもの(以下ウェット)をそれぞれフードプロセッサーで30秒せん断したものを試料とした。この試料について、ガスクロマトグラフィーにて香気分析を行った。また、同試料を用いてほうれん草のごま和えを製造し、社内の専任パネル30名を対象に官能評価を実施した。
【結果】香気分析結果より、ドライでは市販の白擦りごまよりも「香ばしく甘い香り」が多くなり、ウェットではドライよりもさらに多くなった。ほうれん草のごま和えの分析型官能評価では、ウェットは市販の白擦りごまより「コクの強さ」の項目で、ウェットはドライより「蓋を開けた時の甘い香りの強さ」の項目で有意に強いという結果となった(P<0.011)。さらに嗜好型官能評価では、対照と比較してウェットを「おいしい」と答えたパネルが有意に多かった(P<0.010)。一方、ドライとウェットでは嗜好性が分かれ、それぞれが特徴とする香気成分に依存することが示唆された。今回検討した製法を用いることで、ごまの本来の香りをさらに活かした商品づくりが期待される。