2024 年 23 巻 4 号 p. 103-126
本論文では、後継世代のアントレプレナーシップにおける「電子テキストとしての企業家的レガシー」の役割と機能を明らかにした。創業420 年および会社設立105 年の歴史を持つファミリー企業の司牡丹酒造株式会社は、中興の祖である竹村源十郎以降、嫡孫の維早夫、維早夫の長男の昭彦によって経営が受け継がれてきた。その間、それぞれの世代において、高知県だけでなく日本全国の日本酒製造業界に先駆けて、日本酒の製造・販売や酒米の栽培に関する革新を追求してきた。現世代の昭彦は、源十郎以降の家業の歴史である「司牡丹物語」を企業家的レガシーとして電子テキスト化しつつ、それをもとに自らのアントレプレナーシップを育んだ。それは、後にWeb コンテンツへ発展し、従来の語りとしての企業家的レガシーと比べて、反脆弱性、柔軟性、アクセス性の面で優れていた。