赤門マネジメント・レビュー
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ケース研究
トヨタ生産方式の自動車販売業への活用と一般化
自動車販売業の業務改革プロジェクト
田中 正
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2006 年 5 巻 5 号 p. 289-368

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抄録

本論文は、生産における “ものづくり現場” の代表的なオペレーション方式であるトヨタ生産方式(TPS)が、販売・サービス現場の改善に、どのように活用されているか、神奈川トヨタ自動車(上野健彦社長、以下K社)の協力を得て観察し、理論化、一般化を試みた研究中間結果である。 理論化の軸は、販売・サービス業も “ものづくり企業” である、とする「生産マネジメント」(藤本隆宏, 2001a, 2001b) の理論軸を基本にしている。自動車生産を例に取れば、開発コンセプトにもとづく設計情報を、TPSを活用した効率的な生産によって材料である鋼板に転写し、商品である車を、アウトプットする。販売・サービスでは、お店に入るお客様がインプットであり、店舗で販売サービスの価値をお客様に転写し、満足したお客様(感動したお客様)をアウトプットする。店舗において、スタッフによるお客様への価値転写が、TPSを活用しながら、効率的に、組織的に、かつ、お客様の求めることに対応して行われうるかどうかが、課題である。K社の経営理念が、トップ(社長)の強い改革意思と、販売店舗店長のリーダーシップによっていかに実現し、成果に結びついていくかを、表層の競争力、深層の競争力、組織能力などを軸として観察研究した。最後に、アーキテクチャーの観点から、“すり合わせ型” といえる自動車販売に、より効率的な “モジュラー型” の販売ツールを導入し、販売サービスの効率化を実現することが課題のひとつである。

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© 2006 特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
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