抄録
食味向上という観点から100ºC以下の低温度帯での加熱に着目し,それらがミニトマトの果実成分に及ぼす影響を調査した。特に食味に関する成分に焦点をあて,糖,有機酸およびアミノ酸をHPLCにより定性・定量した。糖のうち,90℃-10 minおよび90℃-15 minで加熱した場合に,スクロースが有意に増加した。一方で,グルコースおよびフルクトースの減少は見られなかった。有機酸であるクエン酸とリンゴ酸は,加熱処理に対して同様の変化を示し,70ºCの処理区で最小値であった。食味に重要な役割を果たしているグルタミン酸とアスパラギン酸の比は有意に変化しなかった。これらのことから,トマトの食味に関与する成分である糖および有機酸は,加熱温度や浸漬時間によって影響されることが明らかとなった。さらに,加熱温度の違いによって食す際に甘味や酸味が変化する可能性が示された。