抄録
夏肥および秋肥の施用成分量ならびに施用時期が,秋から初冬季における幼茶樹の裂傷型凍害の発生率と耐凍性に与える影響について試験し,施肥法の改善による裂傷型凍害防止法を明らかにしようとした。
1. 施用窒素成分については,標準施用量に対し無窒素あるいは1/3量で耐凍性は早期に強化された。
2. 窒素成分の多量施用は標準量施用に比べ,必ずしも耐凍性を弱くするようなことはなかった。
3. 耐寒性に関与しているといわれている加里成分についても,特に耐凍性との関係は判然としなかった。
4. 慣行の9月~10月上旬の秋肥の施用は,顕著に耐凍性の強化を遅らせることがわかった。秋肥の施用時期を極端に早く(7月)または遅く(11月)した方が秋芽停止期が早まり,耐凍性は早期に強化された。
5. 9~10月頃の樹体内窒素濃度が比較的高く維持された場合はハードニングが阻害された。
6. 夏肥を施用していなければ8月上旬の秋肥施用でも耐凍性は早期に強化された。
7. 基肥および夏肥を施用すると秋肥施用の早晩は生育に大きな影響を与えなかった。
8. 幼茶樹の裂傷型凍害を防止または軽減する方法として,裂傷型凍害の発生が懸念される地帯ならびに品種では,秋肥の施用は11月以降に行ったほうが良い。このことにより秋芽の生育を早く停止させ,ハードニングが順調にすすむようにすれば,少なくとも裂傷型凍害の被害が中程度の場合には十分防げることがわかった。