抄録
[目的] 変形性膝関節症は、主訴が痛みという特徴をもち、各種の保存的治療が行われている。これらを解析するための基礎となる動物モデルは、靭帯切除や関節内への起炎物質投与などがあるが、ヒトの病態とは異なる点が多い。本報告では自然発症型モデルであるDunkin-Hartleyモルモットを用い、モデルの検討を行うことを主眼とした。その際、食事療法の一つとしてコラーゲン投与を行い、主に関節液を分析し、その効果を推定した。[方法] Dunkin-Hartley雄モルモット(14-month-old)にサメコラーゲン(600mg/kgBW)を一ヶ月間経口投与した。飼育終了後、左膝関節部はホルマリン固定後、脱灰し、組織標本を作製した。切片の染色は、ヘマトキシリン・エオシン及びサフラニンにより行った。右膝関節部を切開し、生理食塩水で洗浄し、関節液を回収した。右脛骨骨端部は、脱脂した後、凍結粉砕し、塩酸グアニジンで抽出した。抽出液中のコラーゲン及びプロテオグリカンをウエスタンブロッティングにより検出した。抗体は抗サメコラーゲン及び抗コンドロイチン6硫酸を用いた。また、アミノ酸分析により関節液及び血液中の遊離アミノ酸及びペプチド由来のアミノ酸を測定した。関節液中のMMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)活性はザイモグラフィーにより分析した。[結果] 病理所見では、両群とも軟骨破壊の程度が顕著であった。コラーゲン投与群では非投与群に比べ、膝関節周囲の骨嚢胞(cyst)の形成頻度の低下が観察された。また、コラーゲン投与群における骨端中のコラーゲンの増大を認めた。プロテオグリカンに関しては非投与群に比べ、高分子のものが多く認められた。関節液中のアミノ酸濃度は、コラーゲン投与により、ハイドロキシプロリン量の増加及び興奮性アミノ酸の1つであるグルタミン酸量の低下を認めた。関節液中のMMPは、コラーゲン投与による変化は認められなかった。[考察] 本実験モデルは病理所見からみるようにOAの重症モデルとしては適当であり、ヒトにおいてこのような病態を解析するには有用なモデルであると思われた。さらに、より短期の系(重症度のより低い)での検討が必要と考えられる。関節液のアミノ酸分析の結果がヒトでの報告と同様の傾向であることからも本実験系の妥当性を示すものと考えている。本実験系を利用した解析により、コラーゲンは、骨・軟骨代謝に影響を与え、OA特有の変化の改善に影響しうることが示唆された。今後OAに対して効果があると報告されている各種物理療法(温熱など)を用いての検討を予定している。