理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: DP240
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骨・関節疾患(整形外科疾患)
整形外科手術後に発症した深部静脈血栓症3例の経験
*左高 朋宏和田 範文大野 隆矢島 克幸宮脇 里奈渡辺 友純熊澤 慎志酒井 浩志
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抄録
【はじめに】近年の理学療法分野は、整形外科領域のみならず、一般外科手術後や脳卒中など様々な領域の患者を対象とし、早期治療開始が主流となっている。今回我々は治療場面における、術後訓練の重要なリスクファクターの1つである深部静脈栓症(以下DVT)の症例を経験したので報告する。【症例1】53歳 男性 腰部脊椎管狭窄症にてH13,1/12腰椎後方除圧固定術を施行した。1/15よりベッドにて下肢筋力強化を開始した。術後1週にて起立・歩行訓練施行、訓練後意識消失・軽度痙攣・顔面蒼白・四肢冷汗を認め、血圧が62/49と低下した。胸部X-Pにて右室肥大、肺血管造影にて両側肺動脈本幹に血栓による塞栓巣があり、直ちにこれを摘出し救命された。【症例2】63歳 女性 左変形性股関節症にてH14,8/22全人工骨頭置換術施行。翌日より理学療法開始したが8/27脱臼し整復。8/29には患側下肢の腫脹が増悪したため9/4ドップラー検査し血栓を認め、右鎖骨下静脈よりフィルターを2週間留置した。【症例3】71歳 女性 交通事故にてH14,8/4入院。外傷性血気胸・出血性ショック・急性循環不全・右大腿骨骨幹部骨折・右脛骨近位端骨折・右肩鎖関節脱臼・右第1肋骨骨折にて外科的処置施行。8/14整形外科転科し大腿骨には髄内釘、脛骨にはプレート固定を施行した。術後より右鼠径部よりフィルターを約2週間留置した。【考察】近年エコノミークラス症候群としてDVTと、それに起因する肺塞栓症(以下PE)の発生が注目されている。予防に関する報告は欧米で多いが、本邦においても整形外科領域における術後の合併症としての報告が散見されるようになってきた。三重野らは生活様式の欧米化や手術適応の拡大に伴う侵襲の増加、高齢などを要因としている。塞栓子には、静脈内血栓・脂肪・空気・腫瘍細胞・羊水などが挙げられ、PE発症の約90%は静脈内血栓で、特に下肢深部静脈・骨盤腔内静脈からの血栓剥離が原因とされている。静脈内血栓の誘発因子として、Virchowの3原則1)血液凝固、線溶系の異常、2)血管壁の障害、3)血流の停滞)が挙げられている。今回の3症例においても、これらの誘発因子によるDVTの発症が示唆され、症例1についてはPEにより致死的心室細動に至ったが適切な処置により救命された。PEの発症危険因子として、Herzogは安静・臥床や高齢、心血管疾患などを報告している。さらに米倉らはベッド上での体位変換・離床直後のトイレ動作・歩行などのリハビリテーション開始をPEの発生誘因としているが、その予測は単一因子では困難で、複数因子の総合判断が必要としている。治療場面において、早期治療・回復に重点を置くばかりでなく、術後のDVTを疑う所見である腫張・熱感・皮膚変色(チアノーゼ)・静脈部の圧痛に留意するとともに、PEの発症も念頭においたリスク管理体制が重要になってくるものと考えられた。今後当院においても、DVTの予防や発症時対策のガイドラインを設定し、術後の合併症の対策を検討していきたい。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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