理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: DP579
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骨・関節疾患(整形外科疾患)
立位練習器「エチュードボー」を用いた部分荷重練習の経験
*高尾 敏文斉藤 秀之金森 毅繁高橋 真希子田中 利和戸村 成男大谷 正男小関 迪
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抄録
【はじめに】下肢骨折などの荷重に関わる部位の術後理学療法(以下,PT)において,部分荷重を必要とする時期が存在する.当院での部分荷重期におけるPTでは,従来,床据え置きの体重計を用いて荷重練習を行っていた.今回,日立機電工業株式会社製の立位練習器「エチュードボー」(HR-XZ1)を用いた部分荷重期におけるPTを経験したので,若干の考察を含め報告する.【対象】〔症例1〕左変形性股関節症(外傷性),人工股関節全置換術(セメント非使用).経過:平成14年7月4日当院整形外科入院.7月5日術前PT開始.7月12日左人工股関節全置換術施行.術後1日目より術後PT開始.術後5週目より部分荷重練習開始.荷重量は体重の1/4.術後6週目より荷重量が体重の1/2へ変更.8月31日(術後8週目)自宅退院.その後外来PT継続.〔症例2〕右大腿骨頚部骨折,骨接合術(CHS+CCHS).経過:平成14年6月19日自転車乗車中に転倒し受傷.6月24日骨接合術施行(CHS+CCHS).6月25日PT開始.術後4週目より体重の1/4の荷重量にて荷重訓練開始.8月3日(術後6週目)自宅退院.その後外来PT継続.【方法】2症例に対し,部分荷重期においてエチュードボーの立位分析モードを用いた部分荷重練習を行った.練習内容は,(1)視覚フィードバックを用いた静止立位での部分荷重練習,(2)部分荷重を維持したままでのハーフスクワット,(3)患側下肢を荷重計の上に置いた状態での健側下肢の振り出し練習,(4)聴覚フィードバックを用いた部分荷重練習とした.【結果および考察】従来の体重計を用いた方法では,荷重面が十分でなく不安定,また荷重量を確認するために足元を見なければならなかったため,荷重時の立位アライメントの崩れや体重計の目盛りが読みにくく不正確になる,といった問題が生じていた.エチュードボーでは左右の荷重面の高さが同じ,十分に広く,固定性されており,荷重量を表示するモニターは患者の正面に設置されている.また荷重計で感知された荷重量をモニターに棒グラフでリアルタイムに表示し,視覚により荷重量を患者にフィードバックすることが可能である.加えて設定した荷重量を超えるとブザーが鳴る機能を備えており,聴覚フィードバックも可能である.これらにより,荷重時に立位アライメントの崩れが見られなくなった.患者からも,「自分がどのくらい体重をかけているかがわかりやすい」「体重計よりも足を乗せる部分が広くて良い」といった肯定的な意見が聞かれており,訓練意欲の向上にもつながったと考えられる. 一方,(1)荷重設定値の上・下限の同時設定が不可能であり,許可されている荷重量を超えた際の聴覚フィードバックが行えない,(2)下肢荷重計と上肢支持棒にかかる荷重量を示す棒グラフが,実際の配列と異なるため見にくい,(3)上肢支持棒の間隔が広い・高さが低い,などの課題も示された.現在改良がなされており,症例数を増やしその効果についても今後検討していくつもりである.
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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