理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: AO026
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主題(科学的根拠に基づく理学療法)
足底挿板が歩行にあたえる運動学的、筋電図学的影響について
*大畑 光司市橋 則明竹村 俊一
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抄録

【目的】変形性膝関節症に対する初期から進行期の治療法として、足底挿板療法が多く用いられる。鎮痛剤を中心とした治療と比較して、外側ウェッジの方が疼痛、歩行能力に効果的とされ、自覚症状の74%が改善したとの報告もある。しかし足底挿板の運動学的機序が明確であるとは言い切れず、運動学的解析については散見されるが、筋電図学的解析についてはほとんど行われていない。本研究の目的は足底挿板が歩行にあたえる運動学的、筋電図学的影響について明らかにすることである。
【対象と方法】健常成人10名(男6名、女4名、平均年齢23.9±3.4歳)を対象とした。被験者にトレッドミル上を時速3kmで歩行させ、足底挿板の有無により歩行に生じる変化を測定した。足底挿板にはソルボセイン製の中足部までの外側ウェッジを用い、傾斜角度を4度、8度の二通りとした。足底圧の測定はパロテックメディカルテクノロジー社製足圧解析装置を用い、歩行時の接床圧、重心軌跡を記録した。さらに歩行時の前額面上での骨盤の位置変化をデジタルビデオカメラで記録し、トリウム社製空間座標算出ソフトMP1000を用いて、2次元座標を算出した。筋電図はトリウム社製筋電計TH-M008を用いて、ADI社製Power LabにてAD変換を行った。被験筋は、中殿筋、大内転筋、半膜様筋、大腿二頭筋、前脛骨筋、内側腓腹筋、外側腓腹筋、長腓骨筋の8筋とした。足底圧は接床圧と重心位置の変化を算出し、二次元歩行解析では骨盤の位置変化を算出した。筋電図は立脚期の平均Root Mean Square値を、最大等尺性収縮を100%としたときの割合で表した。統計処理は反復測定二元配置分散分析を用い、有意水準は5%とした。
【結果】接床圧は歩行周期の10%と20%で外側ウェッジ歩行のほうが有意に高い値を示した。重心軌跡は歩行周期の40%までの有意な側方変位が認められ、歩行周期の90%から有意な前方変位が生じていた。二次元歩行解析では歩行時の側方への骨盤移動量に変化を認めなかった。筋電図解析では内側腓腹筋の外側ウェッジによる有意な低下が生じた。筋活動比では前脛骨筋/腓骨筋比が有意に低下した。
【考察】外側ウェッジが歩行に与える影響として、膝内反モーメント及び膝内側コンパートメント荷重量の減少、重心軌跡の外側変位があげられる。本研究において骨盤の側方移動量に変化がないにもかかわらず、足底での重心軌跡は外側に変化しており、筋活動は回内運動を強めていた。外側ウェッジによる効果は身体重心の変化により説明されることが多いが、今回の結果からは、身体重心の変化より、足圧中心の変化に大きく影響を受けているのではないかと考えられた。

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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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