抄録
【はじめに】
われわれは第38回の本学会において,乳房切除術後における術後3ヶ月までの肩関節可動域と皮膚表面温度の経時的変化について検討し,術後3ヵ月の時点で屈曲角度は術前の状態に戻っておらず,皮膚表面温度も術前より有意に高かったということを報告した.
今回,肩関節屈曲角度と術創部周囲の皮膚温度を測定し,術後6ヶ月まで追跡調査したので報告する.
【対象】
当院において乳癌に対して非定型的乳房切除術を施行された患者15例15肩を対象とした.術側は,右側5肩・左側10肩で,検査時年齢は平均55.3歳(34歳から84歳)で,すべて女性であった.
全症例に対して,術後10日から理学療法を開始し,創部周囲のモビライゼーション・肩関節可動域訓練・筋力訓練を中心に施行した.
【方法】
まず,肩関節の自動屈曲角度を背臥位・両膝屈曲位で計測した.次に,両側前胸部の皮膚表面温度をサーモグラフィー(富士通特機システム社製,インフラアイ2000)を使用して,術創を含む一定の範囲で,計測環境は日本サーモロジー学会の基準に準じて計測した.
計測は,術前と術後2週・1ヶ月・2ヶ月・3ヶ月・6ヶ月で,同一の理学療法士が理学療法施行前に実施した.
各測定段階における肩関節屈曲角度と皮膚表面温度の経時的変化の有意差検定,および両者の相関係数を求めた.なお,検定の有意水準は5%未満とした.
【結果】
肩関節の屈曲角度は,術後2週で最も制限され,その後徐々に改善する傾向を示したが,術後6ヵ月でも術前より有意に小さかった(p<0.05).屈曲角度の回復率は術後3ヵ月で93.6%,術後6ヵ月で95.2%であった.
術側の皮膚表面温度は,術後3ヵ月までの時期は術前より有意に高く(p<0.05),術後6ヵ月では有意差を認めなかった.
【考察】
肩関節屈曲角度は,術後3ヵ月以降も回復していたが,術後6ヵ月でも術前の角度には戻っていなかった.しかし,日常生活での不自由を訴える患者は一人もいなかった.
次に,創部周囲の皮膚表面温度は,術後3ヵ月までは術前より有意に高く,手術によって脂肪組織が切除されたためと考えた.しかし,術後6ヵ月の時点で有意差を認めなくなったことより,創部の治癒過程は,術後6ヵ月までに完了するものと考えられた.
今回の研究より,乳房切除術後の患者に対して術後6ヵ月までの経過観察が必要であると思われた.