抄録
【はじめに】大腿骨頚部骨折患者の術後経過において様々な要因が理学療法の阻害となる。今回、術後歩行能力を維持した群と低下した群に分けその影響因子について調査したので報告する。
【対象と方法】対象は平成17年2月から9月に当院で手術施行した大腿骨頚部骨折患者のうち、回復期リハビリテーション病棟から退院した53例である。その中で受傷前歩行不能例と術後免荷期間を与えられた症例を除いた45例(男性6例、女性39例、平均年齢80.4±9.3歳)とした。調査項目は年齢、性別、骨折型、術式、認知症の有無、在院日数、退院時FIM、退院時の歩行能力を開始した時期の8項目を調査した。歩行能力はBarthel indexでの判定とし、自立歩行、介助歩行、歩行不能に分類し、受傷前の歩行能力を退院時維持した群(維持群)、低下した群(低下群)に分け比較検討した。
【結果】維持群は受傷前、退院時ともに自立歩行であった24例と介助歩行であった2例を合わせた26例、低下群は受傷前自立歩行から退院時介助歩行となった11例、歩行不能の1例と介助歩行から歩行不能となった7例を合わせた19例であった。
年齢は維持群が平均76.8歳、低下群が85.3歳であり有意差を認めた(p<0.01)。性別は維持群が男性3例、女性23例、低下群が男性3例、女性16例で有意差を認めなかった。骨折型は維持群が内側15例、外側11例、低下群が内側9例、外側10例で有意差を認めなかった。術式は人工骨頭置換術とproximal femoral nail(PFN)が約8割であったため、この二つの術式で検定すると、維持群が人工骨頭11例、PFN8例、低下群が人工骨頭6例、PFN10例で有意差を認めなかった。認知症は維持群が2例、低下群が11例存在し有意差を認めた(p<0.001)。在院日数は維持群が平均61.5日、低下群が平均70日であり有意差は認めなかった。退院時FIMは維持群が平均112点、低下群が平均78.2点で有意差を認めた(p<0.001)。退院時の歩行能力を開始した時期は、退院時歩行不能例を除くと維持群が術後平均27.2日、低下群が術後平均29.7日で有意差は認めなかった。
【考察】今回、歩行レベルが低下した症例は19例で全体の42%であった。その要因として年齢と認知症の有無が関与し、性別、骨折型、術式には依存しないことが示された。また術後は歩行能力が高いほどFIMは高いが、両群ともに在院日数は9週弱から10週程度、退院時の歩行能力となる練習の開始時期は4週程度と差がなかった。このことから大腿骨頚部骨折患者において年齢や認知症の有無に関わらず、術後1ヶ月程度が歩行能力の予後判定時期だと考えられ、退院時の生活がイメージできる時期ではないかと思われた。